著者
奥山 光彦
出版者
旭川医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

十分にインフォームドコンセントが得られた症例に対して、乳酸菌が及ぼすシュウ酸カルシウム結石形成抑制効果や尿路結石形成に関与しているか否かについて検討した。ヒト健康成人男性を用いて検討を開始した。乳酸菌投与中は特に食事制限や飲水制限などなく、通常の生活を送ってもらった。先述の健康男性に10日間乳酸菌製剤の内服をさせ、腸内細菌叢を改善させて、乳酸菌製剤の投与前後で24時間尿を採取し、各種尿検査を行う。検討項目 尿検査:24時間尿量、pH、BUN、Cr、Na、Ca、P、Mg、シュウ酸、クエン酸排泄量を検討した。実験結果:各群間で尿中生化学検査値に有意差は認めなかった。尿中シュウ酸、クエン酸排泄量にも変化を認めなかった。乳酸菌内服後の尿量が有意に増加しており、検討項目に有意差を認めなかった要因になっている可能性が示唆された。今後、乳酸菌が及ぼす尿路結石形成抑制効果については、内服前後での条件(飲水量、摂取カロリー等)を一定にさせたり、乳酸菌製剤の内服期間や内服量を変化させ、さらに検討を要すると思われた。乳酸菌は腸内細菌叢を改善させることにより、腸管からのシュウ酸吸収を減少させ、結果として尿中シュウ酸排泄量を減少させることにより、尿路結石症の治療ないし、再発予防に使用できる可能性があり、さらに検討する必要があると思われた。また、腸内細菌叢の異常に起因する便通異常を有する尿路結石患者に対する乳酸菌製剤の臨床的効果についても検討を行う必要性があると思われた。