著者
奥村 香保里 毛利 公美 白石 善明 岩田 彰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.932-941, 2015-03-15

従来は安全な技術であれば利用者は安心すると考えられてきたが,システムが安全なだけでは利用者が安心するとは限らないことが指摘されている.我々は情報システム・サービスの利用者の安心感の要因について調査を行ってきた.因子分析によって"能力・知識因子"が,個人情報の管理や保証などに関する提供者の能力についての意味を含むことが分かっている.提供者の能力については,提供者が情報提供をしなければ一般的に利用者が知りえないものである.よって,提供者が情報提供することが,利用者の安心感に関係があると考えられる.情報提供手法についての研究では,情報提供によって不安を解消するためには,納得させなければならないと考えられている.本研究では安心感の要因の1つとして納得感があると仮定し,情報システム・サービスの利用者の安心感と納得感の関係について質問紙調査および因子分析を行った.また,因子分析の結果から共分散構造分析を行い,納得感が安心感の要因としての側面を持つことを示した.It was thought that the user felt relieved by a safe technique. However, safe systems do not necessarily give a sense of security to the people. We have investigated the factors of sense of security for users of an information system and service. The result has been shown that the factor of "Capability and Knowledge" includes an ability to manage personal information and guarantee for users. Generally, providers' ability could not be taken users without provision of the information. Therefore, providing providers' information should have a relationship with user's sense of security. The research results of information providing method say that reassuring by providing information needs consent. In this research, on the hypothesis that consent is included in the factors of sense of security, we conduct a survey and the exploratory factor analysis of the relationship between sense of security and consent. Then, by using structural equation modeling (SEM), we show that consent would be one of the factors of sense of security.
著者
奥村 香保里 毛利 公美 白石 善明 岩田 彰
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.2159-2167, 2014-09-15

セキュリティ基盤技術やシステム構築・運用技術が高度化しているにもかかわらず,個人情報の悪用やプライバシーの侵害への利用者の懸念は高い.従来は安全な技術によって利用者は安心すると考えられていたが,システムが安全なだけでは安心して利用できるとは限らない.利用者の安心感の要因について検討することは,安心して利用できるシステムの開発,およびサービスの提供の助けになると期待できる.そこで,本研究では情報システムにプライバシー情報を登録する利用者の安心感の要因について,質問紙調査と因子分析を行った.その結果,“能力・知識因子”,“ユーザビリティ・プリファレンス因子”,“身近な他者因子”,“主観的な信用因子”,“安全性因子”の5因子が抽出された.抽出された因子は,先行研究の因子と異なり,対象の評判やうわさ,家族や友人などの身近な他者とともに登録することが安心感の要因になることが分かった.また,共分散構造分析の結果から,安心感の因子が“論理的要因”,“主観的要因”の2つに分かれるという構造が解釈できた.このことから,論理的要因と主観的要因の両方の内容を備えていることが安心感につながると考えられる.