- 著者
-
奥野 聡子
- 出版者
- 日本都市地理学会
- 雑誌
- 都市地理学 (ISSN:18809499)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.100-109, 2020-03-15 (Released:2021-08-15)
- 参考文献数
- 40
インナーシティでは住民の高齢化,住宅の老朽化が進み,空き家や空閑地が増加してきたため,その再生利用が重要な課題となっている.大阪市城東区蒲生4丁目界隈では,空き家となった木造長屋を飲食店へとコンバージョンする再生活動が進められてきた.本稿では,蒲生4丁目界隈での空き家・空閑地の実態を調査・分析し,起業家による再生活動が進展してきた過程について検証した.また,再生活動が誘因となった,大企業資本によるチェーン店の増加と,近隣商店が減少したことを明らかにした.当地区は新たな商業集積により再活性化する一方で,近隣に高層共同住宅が建設されたり,増加するチェーン店の原色の看板が設置されたりと,低層の住宅地景観との不調和がみられる.さらに,住宅地に酒類を提供する店が増え,酔客によるトラブルやごみの散乱,近隣商店の立ち退きなど,住民の生活環境への影響が表出してきたことを示した.