著者
森川 洋
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-53, 2011-03-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
23

Da das Städtesystem eines Landes die aktuelle Situation seiner sozioökonomischen Entwicklung widerspiegelt, entsteht eine enge Beziehung zwischen beiden Seiten. Für eine gleichmäßige Entwicklung eines Landes ist ein Städtesystem des Typs „Rank-Size-Rule“ oder eine polyzentrische Struktur wie in Deutschland nützlicher und wertvoller als ein System des „Primate-City“-Typs. Sie spielen auch eine bedeutende Rolle in der heutigen Globalisierung, wo die Zentren der überregionalen Gebiete, und nicht mehr wie früher die Hauptstädte, das Netz der Städtesysteme untereinander knüpfen. Zudem ist es notwendig, dass – wie in Deutschland – die Unterzentren dicht verteilt und aktiv tätig sind, so dass sie die umliegenden ländlichen Regionen mit städtischen Dienstleistungen versorgen können.Viele Jahre lang war die gleichmäßige Entwicklung des ganzen Landes das wichtigste Ziel der japanischen Raumplanung, obwohl es nicht so klar ausgedrückt wurde wie das Ziel der gleichwertigen Lebensverhältnisse in Deutschland. Zwar hat man in Japan stets angestrebt, die unipolare Konzentration auf Tokyo zu reduzieren, allerdings haben die regionalen Disparitäten gar nicht abgenommen. So hat sich das Hauptkonzept der japanischen Raumordnung in letzter Zeit von der gleichmäßigen Entwicklung des ganzen Landes zur individuellen Entwicklung einzelner Gebiete verändert. Ich meine dagegen, dass am Ziel der gleichmäßigen Entwicklung des Landes festgehalten werden soll, und dass die entsprechenden Maßnahmen für das japanische Städtesystem durchgeführt werden sollen.
著者
山元 貴継 内山 桂次 枝廣 優也
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.44-58, 2016 (Released:2019-05-31)
参考文献数
18

2012 年にテレビアニメとして放映された作品「氷菓」をめぐっては,その舞台となった岐阜県高山市を訪れる観光客の動き「アニメ聖地巡礼」が確認されている.本研究は,それら「アニメ聖地巡礼」者だけでなく,同市市街地を訪れている観光客の層と,それらの観光客の動きの特色を分析したものである.2014 年6 月に高山市内の5 つの調査地点において質問紙調査を行い,計623 組,1,958 名以上分の観光客から回答を得られた.その結果,回答観光客全体では,名古屋大都市圏からは多くの観光客が日帰りで,関東地方および近畿地方からは多くの観光客が宿泊を伴って,高山市の市街地を訪れていたことが明らかになった.このうち48 組(全体の7.7%)が,アニメ作品「氷菓」を視聴した上で高山市を訪れていた.また,回答観光客全体は幅広い世代にまたがっていた一方で,「氷菓」を視聴した観光客は20 代が圧倒的に多くを占め,男性のみの団体観光客が目立った.さらに,回答観光客全体では,歴史的町並みの広がる「さんまち」地区と高山駅との間といった狭い行動範囲にとどまるのに対して,「氷菓」を視聴した観光客は「聖地」を求めて,広範囲かつ頻繁な動きをみせることが明らかになった.
著者
杉浦 芳夫
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-33, 2015 (Released:2019-04-07)
参考文献数
127
被引用文献数
2

本稿は,ナチ・ドイツによるポーランド西部の編入東部地域における中心集落再配置計画最終案と中心地理論との関係について考察した.1941 年頃,Christaller は,編入東部地域の中心集落再配置計画という課題に対し,オリジナルな中心地理論に変更を加えた混合中心地階層の考え方に基づいて計画案を作成したが,最終計画案に直接盛り込まれることはなかった.編入東部地域における中心集落再配置計画案策定の重責を担うドイツ民族性強化帝国委員会の都市建設部門・空間計画部門の統括責任者であったUmlauf によって作成されたものが,最終計画案となった.この最終計画案はChristaller の計画案とは中心集落の規模階層ならびに配置の点で全く異なるものであった.両者の違いは,農村的色彩を残し,一部はポーランド風の集落景観を呈する,規模の小さい都市集落の,中心集落ネットワークへの積極的組み込みの如何によるものであった.しかしながら,最終計画案における集落階層構成が入れ子構造をなしている点は,集落の勢力圏の形が円形と六角形という違いはあるとしても,Christaller の計画案の集落階層構成が入れ子構造をなしている点と共通しており,そこに最終計画案に対する中心地理論ないしは混合中心地階層の考え方の影響を観て取ることができるのである.
著者
稲垣 稜
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.26, 2021 (Released:2023-09-19)

大都市圏における買い物行動に関するこれまでの研究では,郊外地域居住者に焦点が当てられてきたが,都心の人口回復がすすむ中,都心居住者の買い物行動に着目する必要性も高い.そこで本研究では,大阪市における都心居住者の買い物行動を詳細に検討する.調査対象地域は,大阪市中央区の「森ノ宮・玉造」地区である.同地区に居住する人々を対象にアンケート調査を実施し,その買い物行動を分析した.買い物行動は,年齢や性別によって異なっている.高齢者や男性は,高級服を「難波・心斎橋」で購入する傾向にあるが,若年層や女性においては,「梅田・大阪駅」を利用する傾向が強い.普段着の場合は,居住地付近である「森ノ宮・玉造」を利用することが多い.入居時期別にみると,2000年以前に入居した人々においては「難波・心斎橋」を利用する傾向が強く残っているのに対し,2000年代以降に入居した新住民の場合は「梅田・大阪駅」を強く指向している.
著者
須崎 成二
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.16-27, 2019-03-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
15
被引用文献数
3

本稿は,日本最大のゲイバー集積地である新宿二丁目を対象として,ゲイ・ディストリクトの発達モデルを参照しながら,ゲイ・ディストリクトの空間的特徴と存続条件を検討した.ゲイバーの立地傾向の分析,ゲイバー経営者やテナント供給者への聞き取り調査の結果,新宿二丁目では,ゲイバーの経営方針によって店舗の立地に差異がみられ,コストを抑えるリース店舗の存在やカミングアウトの軽減,物件供給に携わるキーパーソンの存在によって維持されている一方で,ゲイ・ディストリクトの消失につながる地域住民との緊張関係も潜在的に存在していることが明らかになった.ゲイ・ディストリクトとしての新宿二丁目は,発達モデルおよびそのモデルに対する批判的論文において示された特徴を部分的に有しており,このことは各都市のゲイ・ディストリクトをより広い枠組みで解釈する必要があることを示唆している.
著者
中澤 高志
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.33-49, 2017 (Released:2020-02-03)
参考文献数
69

本稿の目的は,ステューデンティフィケーションに関する研究をいくつかの分析視角に沿って検討し,研究の発展可能性を展望することにある.ステューデンティフィケーションとは,学生人口の増大と特定地区への集中によってもたらされる都市の社会的,経済的,文化的,空間的変容を意味する.都市空間の変容過程としてみた場合,ステューデンティフィケーションとジェントリフィケーションとの間には,類似性がある.2つの概念は,学生のライフコースによっても結び付けられている.すなわち,学生は未来のジェントリファイアー候補であり,ステューデンティフィケーションの進展とともに生成する「学生の空間」において,一人前の中間階級としてのハビトゥスを身に着けていくと仮定される.ステューデンティフィケーションは,ある種の学生の周縁化を伴うプロセスでもある.本稿では,イギリスにおける自宅生と,オセアニアにおける留学生を取り上げて,学生の周縁化について論じる.以上を踏まえ,ステューデンティフィケーション研究が今後の日本の都市地理学に与える示唆について考察して結びとする.
著者
森川 洋
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1, 2021 (Released:2023-09-19)

日本とドイツの比較地理においてとくに注目されるのは,一極集中型の日本と多極分散型のドイツである.これと関連した対照的現象には,大都市人口比率や都市システム,地帯構造,企業本社立地,大学立地,国土政策などの差異が挙げられる.また高度経済成長期に対する対応の差異は両国の都市システムにも影響する.ドイツでは日本とは違って,大都市人口が少なく,企業本社も州立大学も全国的に分散的に立地し,大都市を中心とする全国的な地帯性はみられない.これに対して,日本では今日まで東京の成長が著しく,東京を中心とした地帯構造が形成されている.国土政策ではドイツにおいては「同等の生活条件」の確立が基本とされてきたが,最近になって成長目標が重視され,11のメトロポール地域も設定されている.日本の全国総合開発計画では「国土の均衡ある発展」が謳われ,東京一極集中の是正について考えられてきたが,大企業本社も大学も東京に集中しており,日本経済の牽引車として東京の機能を低下させるような厳しい措置が講じられることはこれまでになく,一極集中の是正策が十分な成果を収めたことはなかった.日本では東京圏と地方圏,そしてその両者を結ぶ地方大都市からなる地域社会が形成されている.地帯性の下では狭い国土が十分に活用されないし,東京圏では自然災害の危険性も強く,ドイツと比較するとき,東京一極集中は日本の社会経済の発展に真に役立つかどうか疑問に思われる.
著者
久保 倫子 駒木 伸比古 田中 健作
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.76-90, 2020-03-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
80
被引用文献数
1

本研究は,高齢化と居住環境の悪化が進展する郊外住宅地の居住実態について,高齢者の身体・住宅,居住地域,さらに広域のスケールに着目し,高齢者の生活実態や生活上認識する不安,居住環境を総合的に分析することにより,高齢期に住み続けられる居住環境の実現に向けた課題を明らかにすることを目標とした.その一過程として,岐阜市郊外のK地区をとりあげた.特に本研究では,食生活,住宅の維持管理,居住地域の物質的・社会的環境, 広域的な活動および交通手段の考察に重点を置いた.その結果,事例地区の高齢者の多くは地域への愛着と自立した生活継続への希望を有しているが,身体,住宅,居住地域,より広域なスケールで不安や困難に直面しており,それらの克服に向けた調整を通じて住み続けられる条件を蓄えていることが明らかとなった.高齢化と都市縮退に対応した都市インフラ整備,サービス環境の充実,さらに高齢者の変化と多様性を踏まえた,総合的な議論が求められる.
著者
荒木 俊之
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.57-67, 2019-03-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿では,地方都市・岡山市を取り上げて,まちづくり三法制定とそれに関連する都市計画制度充実の結果,地方自治体が小売店の立地規制をどのように選択し,その選択が,主に1990 ~2010 年頃の小売店の立地にどのような影響を与えたかを,筆者の実証研究(荒木 2010,2011,2013)をもとに考察した. まちづくり三法制定とそれに関連する都市計画制度の充実は,大規模小売店舗(以下,大型店)を含む小売店の立地規制を,地域の実情に応じて強化や緩和することを可能にした.岡山市では1990 年代以降,大型店の立地は郊外化するとともに,2004 年以降,開発許可条例を利用した大型店を含む小売店立地の外延的拡大が進み,開発許可条例区域では新たな商業集積地が形成された.コンビニエンスストア(以下,コンビニ)もまた,2000 年代以降,郊外化を指向した.岡山市は,どちらかといえば,小売店に対する立地規制の緩和を選択し,結果として,まちづくり三法施行後も小売店立地は郊外化の傾向にあった.
著者
藤塚 吉浩
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.28-37, 2019-03-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
30

本稿では,社会主義後のプラハを事例に,ジェントリフィケーションに関して次の3 点を明らかにした.第1に,都市の内部構造について,旧市街では地域住民の減少が大きい一方,裕福な住民や外国人が増加した.保存されている歴史的建築物が観光客向けの店舗やホテルに再利用されるという,ツーリズムジェントリフィケーションの影響がみられた.第2 に,歴史的市街地では歴史的建築物が保存されているため,景観に大きな変化はないが,機能の変化に合わせて建物は改変されることを明らかにした.オフィス需要の増大は,歴史的な建築物の再利用だけでは満たすことができず,歴史的市街地の周辺にオフィスビルが開発され,新しい景観がつくられるとともに,ジェントリファイアーを生起する要因となった.第3 に,ヴルタヴァ川のリバーフロントでは共同住宅開発が進められてきたが,そのうち付帯施設の充実した住戸は価格が高く,外国人,特にロシア人を主な顧客としており,グローバリゼーションの影響が看取できた.これらの共同住宅は,洪水地帯に開発された旧河川港に面しているため,浸水のおそれがあることを指摘した.
著者
芳賀 博文
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-18, 2006 (Released:2020-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1

高層の建築物は都市の景観を形成する重要な一要素である.本稿では,東京での近年における超高層建築の著しい建設増を踏まえ,東京の景観が如何に変容しているかを明らかにし,その背景についての考察を行った.東京における超高層建築の建設動向は大きく3 つの時期に分けられるが,時を経るに従って建築数は加速度的に増加している.特に2002 年に成立した「都市再生特別措置法」は,超高層建築の建設に際しての様々な規制を大きく緩和し,建設増を著しく加速化させたものと考えられる.地域別に見ると,西新宿が早期から際立ったスカイラインを形成していたが,1980 年代後半からは都心部やウォーターフロント地域でも著しく高層化が伸展するようになった.ただし,様々な高さ規制により,どの地域でも超高層建築が自由に高く伸びることはない.とりわけ航空法による高さ規制は,東京のスカイラインの形状を大きく規定しているものといえる.
著者
森川 洋
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.118-128, 2020-03-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
10

This paper examines regional patterns of internal migration by age group in Tohoku district, based on previous studies in Kyushu and Hokkaido districts where major regional urban centers are located. The current internal migrations in Tohoku district are characterized by three phenomena: location of major regional urban center Sendai, influence of the great earthquake in Higashi-Nihon and a breakdown of atomic power station, and the notable decrease of population in Akita and Aomori prefectures.In Tohoku district Sendai increases its population (2010 to 2015) and expands its tributary area partly beyond its own prefectural area. However, it seems that Sendai is not so active as Fukuoka because it cannot absorb the largest excess out-migrants of main cities in all parts of Tohoku district. As seen in other districts, many municipalities in this district, especially small ones, show population decrease by out-migration of youth (15 to 29 age), although there are municipalities with social increase by in-migration of other age groups (adults, middle aged, early-stage elderly and late-stage elderly) except youth.In municipalities damaged by earthquake and breakdown of atomic power station in Iwate, Miyagi and Fukushima prefectures many people of all age groups have out-moved to a city. But youth tends to move to large cities in order to find a job or enter a university, though such phenomena are not so remarkable.Akita city as the top of urban system in Akita prefecture of strongly decreasing population is found to have a tributary area of normal type, so that we cannot recognize somewhat different characters of migration pattern from other cities. But youth in medium-sized and small cities in Akita prefecture prefer to out-migrate more to Sendai than Akita city.
著者
由井 義通 杉谷 真理子 久保 倫子
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.69-77, 2013 (Released:2020-09-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は,郊外住宅団地における空き家の実態と空き家発生に伴う地域的課題を把握し,空き家の有効利用などによる地域活性化策を立案する基礎的資料を得ることである.大都市圏郊外地域では短期間に大量の住宅が供給され,入居者の年齢階層に著しい偏りがみられた.しかし,開発から30 ~40 年を経過した住宅団地では,世帯主夫婦は高齢化し,彼らの子どもたちが独立したことにより高齢者夫婦のみと高齢の単独世帯が卓越した地域へと変容している.そのため,郊外住宅団地ではスーパーマーケットの閉鎖や学校の閉校などがみられるようになり,衰退地域となっているところもみられる.地方都市の郊外住宅団地のなかでも公共交通機関や生活利便施設が十分ではない地域では,中古住宅として売りに出されたとしても購入者がなかなか見つからないため,長期間にわたって空き家となることが多い.空き家では,庭木の管理が不十分なために隣接世帯への迷惑となったり,不法侵入者による放火などの危険性もある.また,空き家住宅が増加するとコミュニティ維持の担い手が失われ,地域の衰退に直結するため,自治体では空き家住宅への入居促進に取り組まざるを得なくなっている.
著者
藤塚 吉浩
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.34-42, 2015

<p>本稿では,2000 年代のブルックリンにおけるジェントリフィケーションの変化とその影響について検討した.ウィリアムズバーグにおける創造的活動を確認し,アーティストに利用される歴史的建造物や,倉庫を改装した音楽ホールがつくられるとともに,地区の工業景観をモチーフにしたブランド商品が開発された.イースト川沿いの工場や倉庫跡地の再利用のために,2005 年にゾーニングの変更が行われたが,一部の地域に効果は限られ,全域には及んでいなかった.アフォーダブルな住宅の供給により,許容される容積率は追加されたが,住宅の価格差が大きく,住民間の格差が顕在化した.規模の大きな開発は地域の住民構成を大きく変えることとなり,マイノリティの住民を立ち退きさせる結果となった.</p>
著者
小方 登 稲垣 稜
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.20-27, 2009-03-15 (Released:2020-04-08)
参考文献数
16

本稿では,現代日本の大都市圏周辺部における都市化の物理的実態を明らかにするために,多時点の衛星画像を利用する試みを紹介する.対象地域として大阪大都市圏の周辺に位置する京阪奈丘陵地域を取り上げ, 1978 年,1989 年,2000 年の3時点のLANDSAT 画像データを利用した.まず植生の変化を明らかにするために,正規化差分植生指標(NDVI)の分布を検討した.次に3時点の赤色バンド画像を青・緑・赤の3つのチャンネルに充てて合成カラー画像とし,京阪奈丘陵における段階的な都市化過程を物理的側面から可視化して示した.さらに人口増減データと比較しつつ,色で強調された各時点における宅地造成が,日本住宅公団(現都市再生機構)や民間業者・学校法人による開発行為であることを確認した.結論として,多時点衛星画像の利用が都市圏レベルでの包括的な土地利用/被覆変化を明らかにする有効なデータソースとなりうることを立証した.