- 著者
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舟橋 啓臣
今井 常夫
神部 福司
妹尾 久雄
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
クッシング症候群は、コルチゾルの過剰産生を認める症候群であり、高血圧、耐糖能異常、中心性肥満、満月様顔貌、免疫不全などの重篤な臨床症状を呈する。本邦におけるクッシング症候群の原因の多くは、コルチゾル産生副腎皮質腺腫(CPA=cortisol producing adenoma)であるがその発症機序は明らかにされていない。本研究では、CPA組織において特異的に発現増強あるいは減弱している遺伝子群をRDA(Representational Difference Analysis)を用いて同定し、その機能を明らかにすることによりCPAの発症機序を解明することを目的とした。CPAとそれに隣接する正常副腎から抽出したRNAを用いRDAを行い、CPAに特異的に発現しているcDNA群をクローニングした。その結果、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-A1)及びDiminuto遺伝子が同定された。これらのmRNAの発現は、CPAに強く認められ、隣接正常副腎では殆ど発現が認めらなかった。副腎由来の細胞株H295Rを用い、GST-A1が副腎細胞の増殖に重要であることをこの酵素の特異的な阻害剤であるエタクリン酸を用いて明らかにした。一方、Diminuto遺伝子は、コレステロール産生に関わる酵素をコードすることが報告され、我々は、この発現が副腎皮質刺激ホルモンにより増加することをラットを用いた研究より初めて明らかにした。この結果は、Diminuto遺伝子産物による副腎におけるコレステロール産生がコルチゾル産生に重要であること示唆した。