著者
孫 惠貞
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

「文学における声」をテーマとする本研究は、ドイツ在住のバイリンガル作家・多和田葉子を中心に、既存の「国」や「言語」によって分類されてきた「文学」から、そのような「線引き」では定められない「間」に存在する「文学」がいかに人間の本質に向き合っているのかに着目し、その特徴として現れる「身体性」とりわけ「声」に注目している。具体的には、執筆だけにとどまらず「朗読」というパフォーマンスを通じて世界各地を回りながら「文学」の垣根を取り払う多和田葉子の文学活動における「声」を主な題材とすることで、文学における「声」の意味を見出だし、その行く先を見据える「朗読研究」である。これまでの先行研究が少ない分野であり、また文学研究において「文字」によるものだけでない「音」特に、一過性のパフォーマンスは資料が探しにくく扱いにくいため乏しいのが現状である。DC2の2年目である29年度は、28年度に引き続きフィールドワークに資料の収集、その資料の整理と分析を行う作業を進めると同時に、国内外学会で発表、そして大学でのゲスト講義などを通じて、本研究の位置付けを試みた。<フィールドワーク>1)ドイツのドレスデン(ドイツ衛生博物館のイベント記録撮影)、カールスルーエ(カールスルーエ音楽大学で朗読の記録撮影)、ベルリン(ベルリン日独センターにて朗読イベントの記録撮影)、ポーランドのポズナン(Festiwal Poznan Poetow取材及び撮影):2017.5.9-25 2)多和田葉子が芸術監督を務めるドイツのケルンで行われた世界文学フェスティバル「POETICA」に参加:2018.1.19-29<ゲスト講義> 立教大学「世界文学論」の文学部学部生およそ70人に向け、これまでフィールドワークで製作収集した映像や写真などを交え講義を行った。(2017年12月15日(15:00-16:30)立教大学池袋キャンパス)