著者
多和田 眞 (2008-2009) 多和田 真 (2007) 孫 淑琴 (SUN Shuqin)
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

発展途上国の二重経済について、環境政策と貿易政策がどのように協力して経済厚生を上昇させるかという課題に取り込んできた。特に発展途上国経済の特徴を代表するモデル(Harris-Todaro、1970)に環境問題を導入し、環境保護政策や貿易政策が労働移動や経済厚生にどのような影響を与えるかを分析した。また、循環資源貿易とリサイクル活動をH-Tモデルに取り込んで、貿易自由化がこの経済にどのような影響を及ぼすかも検討してきた。二重経済モデル(Harris-Todaro)についての拡張は多く見られるが、環境問題や循環資源貿易を導入した分析はそれほど多くない。本研究では生産要素は二要素として部門間移動が自由な労働と各部門に固定的な資本を考え、小国開放経済を想定する。そして、従来の研究を発展させて、労働移動のインセンティブが賃金の格差ではなく効用の格差であると考えて分析を行った。その下で工業部門の生産活動が環境汚染を引き起こし、消費者に悪影響を与えると考えて、工業部門の汚染発生率や工業部門の固定賃金水準の変化など、工業品の輸入に対する関税の賦課が労働移動や経済厚生水準にどのような影響を与えるかを考察した。結果は汚染削減技術の推進などの環境保護政策が都市失業の増加を招くが、経済厚生を上昇させるなどの結論を導出した。また、Harris-Todaroモデルに循環資源貿易とリサイクル活動を取り入れた新たな一般均衡モデルを構築し、循環資源の貿易パターンがどのような要因によるのか、循環資源の貿易自由化がこの経済にどのような影響を与えるかを検討してきた。そして、これまでの研究をまとめて、2編の論文を作成して、そのうち1本は国際誌に、もう1本は国内レフェリー誌に掲載となっている。