著者
林 品章 孫 祖玉 林 廷宜
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_89-5_98, 2013-01-31 (Released:2013-03-14)
参考文献数
26

本研究は、日本統治時期に於ける台湾民間建築にみられるアール・デコ様式について、その歴史的変遷と特色とを明らかにすることから今後のデザイン創作に資することを目的としている。調査は、台湾建築物に関する文献や史料、ならびに現存する歴史的建造物を対象に行った。調査資料の分析と蒐集した画像資料の分類の結果、以下のことがらが判明した。(1)日本統治時期に於ける台湾の西洋式建築の発展は3段階に分かれ、アール・デコ様式はその3段階目に発展した。(2)台湾のアール・デコ様式の広まりは、台湾総督府の政策が大きな影響を及ぼした。(3)アール・デコ様式は、モダンなイメージを現すものとして劇場やレストランなど消費娯楽型建築にもてはやされ、その後、民家へと広く普及した。(4)アール・デコ様式は、世界諸民族の文様を取り入れた多元文化融合が特徴であるが、台湾はその精神理念と同じく、台湾、日本、西洋を融合した独自の「台湾アール・デコ様式」を生み出した。(5)アール・デコ様式の台湾への導入は、その後の台湾建築の現代化と国際化への啓発効果をもたらした。