著者
林 品章
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.27-36, 2000-03-31

本論文は1970年代以降の台湾視覚伝達デザイン運動について論述したものである。1970年以降, 「運動」と呼ばれる出来事は, 年代順に「アミーバ(変形虫)デザイン協会」, 「広告時代雑誌」, 「中国時報人間コラム」, 「連広会社」, 「時報広告アカデミ賞」, 「外貿協会デザイン推進センター」など, 六つがあげられる。本論文においては, それらの出来事やその動きが, 当時の台湾の視覚伝達デザインの発展に大きな原動力になっていることを明らかにする。また, それら出来事の考察から, 1970年代から現在に至るまで, 台湾の視覚伝達デザインにおいては, 表現技術や表現概念などが次第に複雑になり, 各領域に重視される度合いも大きくなってきたことが分った。それ故, 本論文は, その六つのデザイン運動の考察に加えて「その他」の項に, 視覚伝達テザインの発展に貢献した各々の組織について重点的に述べる。
著者
林 品章 孫 祖玉 林 廷宜
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_89-5_98, 2013-01-31 (Released:2013-03-14)
参考文献数
26

本研究は、日本統治時期に於ける台湾民間建築にみられるアール・デコ様式について、その歴史的変遷と特色とを明らかにすることから今後のデザイン創作に資することを目的としている。調査は、台湾建築物に関する文献や史料、ならびに現存する歴史的建造物を対象に行った。調査資料の分析と蒐集した画像資料の分類の結果、以下のことがらが判明した。(1)日本統治時期に於ける台湾の西洋式建築の発展は3段階に分かれ、アール・デコ様式はその3段階目に発展した。(2)台湾のアール・デコ様式の広まりは、台湾総督府の政策が大きな影響を及ぼした。(3)アール・デコ様式は、モダンなイメージを現すものとして劇場やレストランなど消費娯楽型建築にもてはやされ、その後、民家へと広く普及した。(4)アール・デコ様式は、世界諸民族の文様を取り入れた多元文化融合が特徴であるが、台湾はその精神理念と同じく、台湾、日本、西洋を融合した独自の「台湾アール・デコ様式」を生み出した。(5)アール・デコ様式の台湾への導入は、その後の台湾建築の現代化と国際化への啓発効果をもたらした。
著者
林 品章
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1-10, 2000-01-31
被引用文献数
1

「台湾戦後視覚伝達デザイン運動」の研究は, 時期により二部に分けられる。前編は1945年から1970年まで, 後編は1970年以降である。本論文は台湾における第二次大戦後の「デザイン運動」と呼ばれる出来事を整理した上で, 関係する文献の探求や当事者のインタビューを通し, 台湾の視覚伝達デザイン史の基礎を作り出そうとするものである。内容としては, 「東方, 国華, 台湾広告会社」, 「中国美術設計協会」, 「黒白展」, 「デザイン人材養成計画」, 「デザイマン(設計人)とデザイナー(設計家)雑誌」などのデザイン事件が含まれている。研究の結果, これらデザインの出来事は工業デザインに関連する「デザイン人材養成計画」を除き, 全て視覚伝達デザインを主体としていることが明らかになった。また, 台湾戦後の早期のデザイン発展, あるいはデザイン教育において, 日本からの影響と日本, 米国の専門家からの協力が多くあったことが分った。
著者
林 品章
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.5_75-5_84, 2002-01-31 (Released:2017-11-08)
参考文献数
39

「台湾戦後の視覚伝達デザイン表現の発展」は、時期により二部に分けられる。前編は1945年から1970年まで、後編は1970年から1970年までである。本論文は前編である。本研究は、台湾の戦後の視覚伝達デザインに関連するさまざまなデザイン活動と表現の様相を系統的に歴史の骨組みとして整理することを目的とする。内容構成としては、台湾のデザイン学界と業界共通の認識に従い「ポスター」「挿画(イラスト)」「商標と標誌(ロゴ)」「パッケージデザイン」「広告デザイン」の五つの項目に分けた。 研究の結果は次のようにまとめられる。(1)台湾の戦後は政治的影響を受け、視覚伝達デザインの表現も保守的な傾向が見られる。(2) 1960年以降、政治経済が安定するに従い、また政府関係機関と民間企業の仲立ちもあって、日本や西欧から現代デザインの理念が大量に持ち込まれた。デザイナーらの積極的活動と相まって、デザイン表現も高度かつ専門的水準に達するようになった。