- 著者
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孫谷 弘明
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.MS4-3, 2014 (Released:2014-08-26)
2007年にヒトiPS細胞樹立が発表されて以降様々な大学・研究機関で活発な研究が行われ,再生医療の分野では昨年,理化学研究所が滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植の臨床研究が開始されたことが記憶に新しい.iPS細胞は自己複製能により大量培養を可能とし,多能性分化能により多種多様な体細胞に分化することができるため,様々な疾患に対する臨床応用への研究が進められている一方,未分化のiPS細胞が移植細胞群内に残存もしくは混入することにより移植適用部位で造腫瘍や異所性組織形成が懸念される.造腫瘍性とは移植された細胞集団が増殖することにより悪性もしくは良性の腫瘍を形成する能力をいい,増殖した細胞集団による周辺組織への影響や細胞集団自身の異所性に分化のリスクが飛躍的に上昇する.従ってiPS細胞を用いた細胞治療において移植細胞中の未分化iPS細胞の評価及び管理は非常に重要である.株式会社新日本科学は京都大学iPS細胞研究所高橋淳研究室との共同研究により,iPS細胞由来ドーパミン神経細胞を用いたパーキンソン病の細胞移植治療の臨床研究のための非臨床試験として,現在造腫瘍性試験を実施している.本発表ではiPS細胞の臨床応用に向けて最重要課題である造腫瘍性の評価を中心にその概要及び進捗を報告する.