著者
宇田川 猛
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.933-939, 2006-12-05 (Released:2022-05-31)
参考文献数
56

湯川は中間子論の提唱によって,また朝永は場の量子論の困難を救うくりこみ理論によって,素粒子物理の発展に欠かすことのできない重要な貢献をされた.湯川の予言した中間子の交換で生ずる核力は,そのまま現在につながり原子核物理の根幹をなすもので,その意味で湯川は原子核物理の礎を築いたものと言える.朝永は後年,多粒子系の集団運動の理論など,原子核物理に直接関わる仕事もされた.二人はまた,基礎物理学研究所と原子核研究所の設立に深く関わり,それを通じて原子核物理の発展に計り知れない貢献をされた.二人の貢献をこの文章で語り尽くすことは不可能であるが,筆者の個人的体験を交えながら振り返ってみたい.