著者
守屋 修二
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.179-185, 1991-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

口唇口蓋裂児の外鼻ならびに上顎の成長発育を調べる目的で, 鼻梁線, 耳介付着線および耳介長軸の三者間の角度の検討を行った.研究対象は正常な三カ月児21名と生後三カ月, 一部5~10カ月の片側あるいは両側の口唇口蓋裂児術前例69名である.結果: 1.耳介付着線と鼻梁線とのなす角度は, 正常三カ月児, 片側口唇裂児, 片側唇顎口蓋裂児, 両側唇顎口蓋裂児, の順に小で, 各々の間に有意差が認められ, 口蓋裂を合併するものは外鼻の成長が小となる傾向が認められた.2.耳介付着線と耳介長軸とのなす角度は, 披裂度の増加に伴い減少の傾向が認められ, 三カ月正常児と両側唇顎口蓋裂児との問にのみ有意差が認められ, 何らかによる耳介の発育障害が考えられた.3.耳介長軸と鼻梁線とのなす角度でも上記2者と同様の傾向が認められたが, 三カ月正常児と片側口唇裂児, 片側口唇裂児と片側唇顎口蓋裂児の間には有意差は認められなかった.すなわち, 耳介長軸は基準線として不適当と考えられた.以上のことから, 口唇顎口蓋裂児中とくに口蓋裂児に上顎の劣成長が強く, 外鼻の発育も抑制されている傾向は認められるものの, 耳介長軸を発育の基準にすることは不適当と推測された。