著者
守山 裕大
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

イカ、タコに代表される軟体動物頭足類は心臓を3つ持つことが知られている。一つは体心臓と呼ばれるもので全身に血液を送り込むものであり、他の二つは鰓心臓と呼ばれ、酸素を取り込む器官である鰓に血液を送ることに特化している。どのようにして頭足類は心臓を3つ持つようになったのか、その発生学的メカニズムを明らかにし、進化過程に迫ることが本研究の目的である。本研究ではヒメイカ(Idiosepius paradoxus)をモデル動物として用いている。前年度まではwhole mount in situ hybridization法によって様々な心臓発生関連因子の時系列的な発現様式を詳細に解析した。それらの結果を踏まえ、本年度では体心臓、鰓心臓において発現が確認された遺伝子の機能解析、また心臓前駆細胞の挙動を追跡すべく、ヒメイカ胚への顕微注入法の確立を目指した。まず、様々なモデル生物においてこれまでに確立されている顕微注入法(マウスMus musculus, ゼブラフィッシュDanio rerio, アフリカツメガエルXenopus laevis など)を試みたが、いずれも卵殻を突き破ることができず、成功には至らなかった。そのため、次に卵殻を薬剤を用いて処理すること、またレーザーを照射することなどにより卵殻の除去を試みたが、これらも成功には至らなかった。本年度の達成度心臓発生関連遺伝子のクローニングとその発現解析、またそれに伴う組織学的解析は詳細に行うことができた。しかし心臓発生関連遺伝子の機能解析、また心臓前駆細胞の挙動の追跡は顕微注入法が確立できなかったために遂行することができなかった。