- 著者
-
守山 雅也
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
水素結合による分子の自己集合・自己組織化を利用した材料では、ミクロな分子間相互作用によって形成される周期構造や階層構造、つまり集合・組織化構造が材料の多機能・高機能を発現させることが期待できる。本研究ではこの自己集合、自己組織化材料として物理ゲルに着目し、その機能(分子間相互作用)を制御する外的刺激として「光」を用いた。まず、前年度に開発したアゾベンゼン部位を有する光応答性ゲル化剤とディスコチック液晶であるトリフェニレン誘導体を複合化して、光刺激による液晶ゲルの複合構造変化を検討した。その結果、紫外線照射によるアゾベンゼン部位の光異性化反応により、ディスコチック液晶の自発的な配向を誘起し、光刺激を与えない場合と異なる複合構造の作成に成功した。また、局所的な紫外線照射を行うことで、この複合構造変化を利用したマイクロメートルレベルの光パターニングにも成功した。さらに、水素結合部位と光応答性部位のアゾベンゼンの距離が近いゲル化剤(イソロイシン誘導体)をあらたに開発し、ネマチック液晶と複合化した際の光誘起複合構造変化について調べた。その結果、非偏光の平行紫外光を照射することで、ゲル化剤が形成する繊維状集合体上のアゾベンゼンの光配向が起こり、周りのネマチック液晶分子もそれに応じて配向することが分かった。基板に対する紫外光の照射角度を制御することで、液晶配向の角度もコントロールできた。低分子液晶の光配向制御に関しては、これまで基板表面の2次元平面に展開した光応答性分子で制御することが主であったが、今回3次元空間に展開した自己組織性集合体により液晶配向を光制御できたことは、液晶の3次元空間的制御を行う観点から非常に興味深い結果である。