- 著者
-
大川 周治
守谷 直史
野崎 晋一
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1992
プロスポーツ選手を用いて、スポーツ時における咀嚼筋の活動様相を解明するとともに,各種スポーツ行動時における咀嚼筋の役割を明確にすることを目的として,以下の実験を行った。プロサッカー選手(サンフレッチェ広島)6名に対してシュート(強蹴)5回,シュート(軽蹴)5回,遠蹴5回を,プロ野球選手(広島東洋カープ)のうち,投手4名に対してスローボール5回,剛速球5回を,打者7名に対してトスバッティング(軽振)5回,トスバッティング(強振)5回を行わせた。被検筋は左右咬筋,左右側頭筋前部,およびサッカーでは左右大腿四頭筋外側広筋,蹴足の腓腹筋内側頭,野球では利き腕の上腕二頭筋,上腕三頭筋,尺側手根屈筋とした。各被験運動時の筋活動に関する記録分析,及び各被験運動のビデオ録画による動作分析を行った。なお,コントロールとして最大咬みしめを5秒間行わせた。その結果,サッカーではシュート(強蹴)時,咀嚼筋に筋活動が認められた被験者と,ほとんど認められない被験者に分類される傾向があった。野球ではトスバッティング(強振)時,及び剛速球投球時,大半の被験者において咀嚼筋に筋活動が認められた。以上より,全身的に最大筋力の発揮が要求されるようなスポーツ行動時には咀嚼筋が同調して活動している可能性が示唆されたが,スポーツの種類ないし動作の内容により影響を受ける可能性も示唆された。現在,これらの咀嚼筋活動に関して,筋活動持続時間,積分値,最大咬みしめ時筋活動量に対する比率,動作との関連性について分析中である。ハンドボール(湧永製薬),バレーボール(JT)に関しても,同様に記録分析し,各種スポーツ行動時における咀嚼筋の役割をより明確にしていく予定である。なお,本研究に対してNHKが興味を示し,サッカーに関しては中国地方及び近畿地方に,野球に関しては日本全国に向けて,本研究の内容がテレビ放映されたことを付記しておく。