- 著者
-
山本 恭子
安井 久美子
茅野 友宣
鵜飼 和浩
- 出版者
- 一般社団法人 日本環境感染学会
- 雑誌
- 日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.5, pp.347-352, 2009 (Released:2009-12-10)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
-
2
手洗いは感染予防策のなかでも,最も重要な手段のひとつである.本研究では,地域における高齢者を対象に手洗いの除菌効果,手洗い方法の特徴を明らかにし,手洗いの指導方法を検討した. 石けんと流水による手洗いの除菌効果について調べるために,高齢者(17名)および看護師(15名)の手洗い前後での手指の細菌数を測定したところ高齢者では手洗い前の手指の細菌数が平均620.2 CFUであり看護師の164.1 CFUと比較して多く,高齢者においては17名のうち8名で手洗い後に手洗い前よりも多くの細菌が検出された.手洗いの手技を観察すると,手のひらや手背部,指の間は半数以上の人が擦り合わせていたが,指先や母指,手首については擦り合わせている人が少ないことが分かった.また,すすぎを確実に行っていた人は23.5%,乾燥を確実に行っていた人は29.4%と少なかった. そこで,感染予防のための手洗いの必要性や手洗い方法を指導した後,手洗い手技等について再度観察を行い指導の効果を見たところ,64.7%の人が指先を,76.5%の人が母指を,41.2%の人が手首を擦り合わせており,すすぎを確実に行った人70.0%,乾燥を確実に行った人94.1%と有意な増加が見られ,手洗い手技の改善が示唆された.これらの結果より,手洗いを感染予防に繋げるためには手洗いを奨励するだけでなく,手洗い手技についても指導する必要があると考えられた.