- 著者
-
山本 恭子
桐村 智子
鵜飼 和浩
- 出版者
- 日本環境感染学会
- 雑誌
- 環境感染 (ISSN:09183337)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.3, pp.213-219, 2000-08-23
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
-
3
強酸性電解水手洗いによる皮膚への影響を角質層表面の細胞変性と経皮水分蒸散量 (TEWL値) より検索し, 除菌効果と合わせて検討した.<BR>皮膚への影響について, 角質層表面の細胞変性をみると60秒3回の手洗いで強酸性電解水は水道水, ウェルパス<SUP>®</SUP>, ヒビスクラブ<SUP>®</SUP>よりも強い変性が認められたがTEWL値に変化はみられなかった.また, 強酸性電解水1回手洗いを15, 30, 60秒間で比較すると細胞変性は15秒間, 30秒間手洗いではいずれも60秒間と比較し軽度であった.しかしTEWL値は15, 30, 60秒間の手洗いでは変化は認められなかった.除菌率は15秒間手洗いで平均66.6%, 30秒間手洗いで89.5%, 60秒間手洗いで91.0%であり, 15秒間手洗いは30秒間, 60秒間手洗い群と比べ劣っていた.<BR>さらに, 臨床の場における手洗いを考慮し15秒間および30秒間手洗いを連続20回行うと, 両群とも細胞変性が認められたが, 15秒間手洗い群では48時間後, 30秒間手洗い群では72時間後に元の状態に回復した.TEWL値は30秒間手洗い20回終了直後に増加が認められたが24時間後には元の状態に回復した.<BR>以上の結果より, 強酸性電解水手洗いにおいて皮膚への影響を最小限に抑え, しかも除菌効果を得るためには30秒間の手洗いがもっとも適していると考えられた.また, 強酸性電解水手洗を頻回に行う場合には常に手荒れの可能性があり, 手荒れ予防対策を考慮する必要があろう.