著者
安井 喜行
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.117-131, 1999-03

いま戦後の社会保障・社会福祉の基本的な枠組みは,介護保険制度の実施を突破口とした「社会保障構造改革」や「社会福祉基礎構造改革」により抜本的な改革を迫られている。それは,国の責任と費用負担による生存権保障としての側面を抑制し,住民の自助努力や相互扶助に転嫁する側面をいっそう強化するものである。社会福祉の分野では,「多様なニーズ」に対応した「多様なサービス提供主体の参入」を促進することが中心的な課題にすえられている。その一つとして,生活協同組合(以下「生協」)の福祉事業への参入が政策的に期待されているのである。日本生活協同組合連合会(以下「日本生協連」)も,これまでの社会福祉に対する取り組みを基盤に,「福祉の事業化」をすすめる方向を検討している。そうしたなかで,生協の福祉活動・事業の位置や社会的性格を理論的にどう整理するか,あらためて問われてきている。ここでは,生協の福祉活動・事業を住民のくらしと自治に根ざした民間社会福祉に位置づけ,地域福祉活動としてどう発展させるか,その基本的な方向を検討することにしたい。