著者
三船 毅
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.189-210, 2000-12

投票行動研究において投票コストは重要な概念である。投票コストとは、有権者が選挙で投票する際に負担する時間,労力,そして、そのための情報収集などである。実証研究では有権者の社会的属性が投票参加に影響を与えることは,初期の研究からの多くの研究者が検証してきた。これはいわば,有権者の社会的属性が投票コストを減少させることを検証してきたのである。しかし,有権者のコストを減少させるメカニズムは社会的属性だけではない。近年ではSocial Capital(人間関係資本)に代表されるように,個人の持つ人間関係がその人の行動に影響を与えるといった考えが,社会学・政治学の中でも用いられるようになってきている。本稿では,投票コストの概念的整理をおこない,理論的分析で提出されてきた,難問であるダウンズのパラドクス,さらにそれを拡張させたオルソン問題を整理し,先行研究の解決方法を検証し,実際の有権者のコスト減少のメカニズムを分析していく。
著者
小坂 啓史
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.93-112, 2005-12

本稿では,社会政策やその研究領域の概念・課題としての「社会的排除」に関し,初めに相互行為としての排除の関係,次にそれが社会的排除として構造化されることについて述べた。またその対応としての「社会的包摂」の政策については,対象者への選別過程により,排除の状況が現出することにふれた。以上の考察をふまえ筆者が行った調査の結果をみると,排除の対象としては公的な空間での「精神病にかかっている人」「知的能力に障害がある人」,私的な空間での「同性愛・両性愛の人」,公共的な空間での「ホームレス」の存在に対しての意識が高かった。社会政策基盤としての社会的排除・包摂の社会意識的基準については,(1)労働意欲についての主体的姿勢とやむを得ず働けない状況に基準がおかれていること,また(2)年齢の高低や素行の良し悪しについても重視されていた。(1)は積極的福祉の存立基盤となるが,そこからの排除への対策として他の連帯方法の模索が必要であり,(2)は社会的排除場面において若者へのエイジズムという要素がはたらいている可能性が指摘できた。
著者
沢 恒雄
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-67, 2001-12
被引用文献数
1

日本は,20世紀末に瞬間的に工業化社会で世界一の経済大国になった。その直後に土地と株のバブル経済がはじけ,算出不能な不良債権の処理を誤り,世界的な株価主体のマネー経済に翻弄され,その後遺症から抜けきれていない。ただ最盛時の資本蓄積と圧倒的な経済力をまだ保有している。それらを利用して実態から乖離したマネーにだけに価値観をおく生活から文化に価値観をおく生活に軸足を変えるべきである。具体的には日本の伝統と文化に整合性の良い新たな環境倫理感を社会システムに組み込み,さらに文化遺産を情報システム(ディジタル)化し,管理運用のノウハウを含めて世界に発信する。そして経済的に弱小国の文化と言語を守り,識字率の向上効果による人口抑制戦略により持続可能な地球経営が可能となる。
著者
梁瀬 和男
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.101-116, 2006-12

平成14(2002)年2月,小泉純一郎首相(当時)は通常国会の施政方針演説の中で「知的財産立国」という国家戦略を宣言した。それを受けて,平成16(2004)年5月に公表された「知的財産推進計画2004」の中で,「地域ブランド」の保護制度のあり方についての検討が明記された。商標法が一部改正され,地域団体商標(地域ブランド)制度が平成18(2006)年4月1日に施行されるや,全国各地から地域団体商標が多数出願された。残念ながら地元での調整がつかず,同一又は類似の商標が複数の団体から出願されるなど,地域ブランドの争奪戦も始まっている。愛知県でも,「八丁味噌」や「名古屋コーチン」が複数の団体間で争われている。特許庁は出願後,約半年で査定の結果を発表する予定といっていたが,10月中旬現在,一切発表されていない。問題の核心に踏み込み,特許庁の査定結果を推測するとともに,トラブルの解決を目指して論述してみたい。

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著者
菅野 雅彦
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.7-23, 2004-12

14世紀のイギリスはあらゆる面で激動の世紀であった。ガワーが生まれて数年後、1337年にフランスとの間に戦争が始まった。この戦は「百年戦争」と呼ばれる。当時、イギリスには十字軍の余燼がまだ燻っていた。また、ローマ教会がローマとアヴィニヨンに分裂し、二人の法王が並立した。14世紀には、イギリスは三度も黒死病に襲われ人口の半分以上が死亡した。物価が高騰し、土地を捨てて逃走するものが多く出た。エドワード王が亡くなり、孫のリチャード二世が僅か十才で即位した。しかし、ガワーの期待は無残にも裏切られたので、彼はヘンリー四世に希望を繋ぎ平和を願って詩を書いた。
著者
安井 喜行
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.117-131, 1999-03

いま戦後の社会保障・社会福祉の基本的な枠組みは,介護保険制度の実施を突破口とした「社会保障構造改革」や「社会福祉基礎構造改革」により抜本的な改革を迫られている。それは,国の責任と費用負担による生存権保障としての側面を抑制し,住民の自助努力や相互扶助に転嫁する側面をいっそう強化するものである。社会福祉の分野では,「多様なニーズ」に対応した「多様なサービス提供主体の参入」を促進することが中心的な課題にすえられている。その一つとして,生活協同組合(以下「生協」)の福祉事業への参入が政策的に期待されているのである。日本生活協同組合連合会(以下「日本生協連」)も,これまでの社会福祉に対する取り組みを基盤に,「福祉の事業化」をすすめる方向を検討している。そうしたなかで,生協の福祉活動・事業の位置や社会的性格を理論的にどう整理するか,あらためて問われてきている。ここでは,生協の福祉活動・事業を住民のくらしと自治に根ざした民間社会福祉に位置づけ,地域福祉活動としてどう発展させるか,その基本的な方向を検討することにしたい。
著者
菅野 正彦
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.83-97, 2003-12

ボエティウスはローマの貴族の家庭に生まれたが,陰謀を働いた廉でパヴィアの牢獄に幽閉された。処刑されるまでの間に牢獄の中で書いたのが,この有名な『哲学の慰め』である。「思いを深く真理探究に致す者は/また岐路に迷うことを欲しない者は/心眼の光りを自己自らの中に向けよ」(III. m. 11. 1-3)と述べているように,獄中で筆を進める彼の精神力と記憶力の強靱さに今更ながら驚かされる。学問を中途で放棄するな,真摯な情熱を抱けと後世の人々を励まし,知の追求と神の愛こそ人間の真の幸福の源泉と明言する。神の叡知,即ち神の摂理(Providence)を解するために,可能な限り頂上に登らなければならない。行動を引き起こすのは,意思と力である。