著者
安原 陽平
出版者
沖縄国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、学校での精神的自由の保障を目的として、2018年度から教科化される特別の教科「道徳」における教師の教育の自由について考察するものである。今年度は、研究実施計画を踏まえ、①理論状況の確認・検討、②教育行政ならびに各学校での進捗状況の確認・検討をそれぞれ進めている。①については、教科書使用義務、補助教材選定の自由を主たる対象として研究を進めた。とりわけ補助教材選定の自由については、ハードな規制に加え、ソフトな規制にも目を向ける必要があることが確認できている。この成果については、研究会ならびにシンポジウムで公表しており、次年度以降、論文として発表する予定である。同時に、ドイツにおける学校制度や教育に関する連邦憲法裁判所の判例なども検討し、比較研究の基盤も整えている。②については、2018年度からの開始に合わせて2017年度は小学校で使用される教科書の採択が実施されたため、関連する資料を収集し、検討をおこなった。とくに沖縄県の那覇地区を対象としている。採択された教科書の性格等に加え、採択の審議過程などの考察もおこなった。審議過程に関して、不透明さが残る部分もあり、教科書の内容面に加え、採択の手続的正当性も問題になることが確認できている。また、現職の教師等との研究会・勉強会にも参加し、次年度の準備状況、道徳教育推進教師の役割、保護者対応の実態など、各学校における進捗状況の把握に努めた。多忙化による準備時間の不足、人事考課と給与の連動による萎縮効果など、自律的な教育実践を妨げる諸要素を確認できている。