著者
安岡 佳穂子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

古典文学には多くの変身が描かれている。異類が人間の姿に化けたり、人が本来の性とは異なる姿になることで、「種」や「性」の境界を越えて、新たな共同体へ加わろうとする。とりわけ狐は作中で美女の姿をとることが多く、人の社会と積極的に関わろうとしてきた動物だろう。人と狐の異類婚姻譚は日本や中国の古典文学に数多く描かれ、現代まで親しまれている。本研究では中世から近世前期にわたって作られた絵巻・絵入り本から、狐の異類物を中心に採りあげる。御伽草子『玉水物語』は、異類から人へ、男から女へという、二重の越境を果たしている点に注目できる。本研究では『玉水物語』を題材に、種と性の越境について検討したい。