著者
相馬 武久 安川 明男 甲斐 一成
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.89-93, 2002-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

本邦の家庭猫における猫免疫不全ウイルス (FIV) 抗体, 猫白血病ウイルス (FeLV) 抗原および猫コロナウイルス (FCoV) 抗体の陽性率を検討した. 胸・腹水貯留により猫伝染性腹膜炎 (FIP) が疑われた症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ26.3%, 36.8%で, 健康猫 (FIV9.3%, FeLV8.1%) に比べ高い値を示した. 上部気道炎を呈する症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ35.7%, 21.4%で, 健康猫に比べ高い値を示した. 以上の成績から, FIVやFeLVの感染がFIPや呼吸器感染症の顕性化の一因である可能性が示された. 一方, 健康猫におけるFCoVの陽性率は47.7%と, FIV, FeLVに比べ高く, FCoVの野外での伝播力の強さがうかがわれた. また, 貧血症例が66.7%ときわめて高いFeLV陽性率を示したことから, 貧血を伴う症例においてFeLV検査は不可欠な診断手段であることが示された.