著者
安本 博司
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-36, 2014-12

本稿では、在日コリアン(以下、「在日」と表記)の運営するNGO団体(Organization of United Korean Youth Japan、以下、KEYと表記)において、個々のメンバーがどのような居場所を形成してきたのか、あるいは形成しようとしているのか、を明らかにしようとするものである。また、居場所の意味づけの多様性を描き出すことを目的に、世代に着目し分析をおこなった。世代とは、第一世代を在日韓国青年連合の立ち上げ期に関わった者や立ち上げ後活動の中心にいた者、第二世代を名称変更後の在日コリアン青年連合において活動の中核を担っている者または、歴史人権講座や社会運動に継続して参加している者、第三世代を語学学習や交流会目的で参加している者とし、世代ごとの居場所への意味づけを検討した。調査は、元メンバーと現メンバーの計7名に対して半構造化インタビューをおこなった。その結果、明らかになったことは、第一世代・第二世代と第三世代の居場所の形成地点や居場所への意味づけが異なり、同じ空間内に居場所の棲み分けがされていることが明らかになった。しかしながら、それは固定したものではなく、それぞれが居場所を確保しようとする「居場所のせめぎ合い」とも言うべき動的な居場所の形成過程が明らかになった。