- 著者
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森下 慎一郎
眞渕 敏
山崎 允
笹沼 直樹
花田 恵介
安東 直之
道免 和久
岡山 カナ子
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.B0232-B0232, 2006
【目的】<BR> AHCPR(健康ケア政策局・研究局)のガイドラインにおいて、褥瘡は自分自身で体位交換することのできないベッド上や車椅子上の患者に発生のリスクが高いとされている。今回我々は、仙骨部に褥瘡を伴った症例と伴わなかった症例、対麻痺2例を対象に栄養状態、ADL、骨突出部圧の状態を調査し比較検討した。<BR>【方法】<BR>(対象)対麻痺2例。症例1:61歳。男性。診断名:肝細胞癌。硬膜外血腫。現病歴:某年12月、肝細胞癌摘出術施行。術後硬膜外血腫発症し、両下肢不全麻痺が出現。入院期間中、誤嚥性肺炎の為、2週間ICUに入室。症例2:58歳。男性。診断名:脊髄炎。現病歴:某年4月、当院神経内科に入院し、脊髄炎と診断される。脊髄炎由来の両下肢不全麻痺を呈していた。<BR>(調査項目)褥瘡評価はDESIGNを使用。栄養状態は総蛋白(TP)、血清アルブミン(Alb)、ヘモグロビン(Hb)を測定。ADL評価はFIMを使用。褥瘡部の圧測定は簡易体圧計セロ(ケープ社製)を用いて背臥位、ベッドアップ肢位、側臥位、車椅子坐位で測定。<BR>【結果】<BR>褥瘡(DESIGNの合計点数):症例1は入院から5週後、仙骨部に褥瘡が発生した。14週時で8点、25週時には22点と悪化を辿った。症例2は入院期間中、褥瘡は発生しなかった。<BR>栄養状態:症例1は14週時からAlb、Hbは低値を示し、25週まで変化は無かった。症例2は8週時でTP、Alb、Hb全てにおいて低値を示していたが、13週ではTP、Hb共に改善を示した。<BR>ADL(FIM):症例1は14週時で合計点数が60点であったが、全身状態悪化に伴い18週以降は48点と低値を示し続けた。症例2は訓練開始時は61点であったが、13週の時点で80点となった。<BR>仙骨部体圧:症例1は背臥位の圧は高く、ベッドアップの上昇に伴い圧が高くなる傾向があった。症例2は背臥位や車椅子坐位での圧は高いものの症例1と比べると低かった。<BR>【考察】<BR>症例1は入院から5週後、仙骨部の褥瘡が発生した。栄養状態をみると、低カロリー状態や鉄分欠乏による貧血状態が継続していた。また、ADLは経過と共に低下し、褥瘡も悪化する傾向を辿った。逆に症例2は経過と共にADLの向上を示した。ADL向上は離床を促し、同一肢位予防にも繋がる。従って、褥瘡予防や治療の点でADL向上は重大だといえる。一方、骨突出部圧をみると症例1は背臥位やベッドアップ肢位での仙骨部圧は高かった。ベッド上の同一肢位により軟部組織が虚血性変化を起こし、褥瘡が悪化したのではないかと考えられた。<BR>今回の2症例をみると症例1のようにADLが低下し、褥瘡形成部に過度の圧がかかる場合には積極的に離床を進めていかなければならない。ポジショニングや除圧方法の指導だけでなく、離床やADL向上は褥瘡予防や治療に重大であると考えられる。