著者
梅地 篤史 天野 暁 橋本 幸久 内山 侑紀 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.107-113, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
14

要旨:欧米では,脳性麻痺や脳卒中の小児症例に対してCI療法を実施し,その効果が報告されている.今回,脳梗塞後片麻痺を呈した8歳の女児に2度のmodified CI療法を実施した.小児症例にCI療法を実施するにあたり,長時間の訓練へ集中と麻痺手に対するモニタリングが困難であることが予想された.それに対して,訓練環境や時間,方法を工夫,修正した.1度目の介入後に上肢機能の改善を認めたが,日常生活での麻痺手の使用は不十分であったため,実生活での使用に着目し2度目のmodified CI療法を実施した.その結果,さらなる上肢機能の改善と,麻痺手の使用方法に変化を認め,介入1年後まで改善が維持された.
著者
福岡 達之 杉田 由美 川阪 尚子 吉川 直子 野﨑 園子 寺山 修史 福田 能啓 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.174-182, 2011-08-31 (Released:2020-06-25)
参考文献数
35

【目的】本研究の目的は,舌骨上筋群に対する筋力強化の方法として,呼気抵抗負荷トレーニング(expiratory muscle strength training: EMST)の有用性を検討することである.【対象と方法】対象は,健常成人15 名(男性10 名,女性5 名,平均年齢29.3±4.6 歳)とした.方法は,EMST とMendelsohn 手技,頭部挙上を行ったときの舌骨上筋群筋活動を表面筋電図で測定した.EMST は,最大呼気口腔内圧(PEmax)の25% と75% の負荷圧に設定し,最大吸気位から強制呼気を行う動作とした.各トレーニング動作で得られた筋電信号について,1 秒間のroot mean square(RMS)とWavelet 周波数解析を用いてmean power frequency(MPF)を算出し,それぞれトレーニング間で比較検討した.【結果】舌骨上筋群筋活動(% RMS)は,EMST の75% PEmax が最も高く(208.5±106.0%),25% PEmax(155.4±74.3%),Mendelsohn 手技(88.8±57.4%),頭部挙上(100% として正規化)と比較し有意差を認めた.また,Wavelet 周波数解析から,EMST 時には他のトレーニング動作と比較し,高周波帯領域に持続する高いパワー成分が観察された.MPF は,EMST の75% PEmax が最も高く(127.8±20.7 Hz),25% PEmax(107.6±20.1 Hz),頭部挙上(100.4±19.3 Hz)と比較して有意差を認めた.【結論】EMST は,舌骨上筋群の運動単位動員とtype Ⅱ線維の活動量を増加させる可能性があり,筋力強化として有効なトレーニング方法になることが示唆された.
著者
大谷 愛 竹林 崇 友利 幸之介 道免 和久
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1141-1145, 2015-10-15

Abstract:今回われわれは,慢性期の脳卒中患者2名にCI療法を実施する際,日常生活における麻痺手の使用を促すためのディスカッション時に,従来法の言語のみによる対話に加え,麻痺手に対する訓練における意思決定補助ツールであるAid for Decision-making in Occupational Choice for Hand(ADOC-H)を開発し,用いた.結果,介入前後でFugl-Meyer AssessmentとMotor Activity Logの向上を認めた.加えて,ADOC-Hを用いた議論に関する感想として,2名からは「文字や言語だけよりもイメージが湧きやすい」等のポジティブな感想も聞かれた.しかし,上肢機能が比較的保たれ,介入前から生活で麻痺手を積極的に使用していた患者には,「すでに麻痺手で行っている」といった選択肢の少なさに対する問題提起も聞かれた.今後は,ADOC-Hが従来法に比べ有用であるかどうかを,対象者の選定とともに,調べていく必要があると思われた.
著者
田内 悠太 荻野 智之 森沢 知之 大松 重宏 坂本 利恵 和田 陽介 道免 和久
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1099-1105, 2018-11-10

要旨 【目的】介護支援専門員(ケアマネジャー,care manager;CM)を対象に,心不全疾患理解度とケアプラン状況を把握することを目的とした.【対象・方法】2016年9月時点での兵庫県丹波医療圏域内に登録してある60か所の事業所に在籍しているCM 152名に対し,郵送法にてアンケート調査を実施した.【結果】回収率は71.7%.CMの心不全の疾患理解度は高かった(72.0%)が,ケアプラン作成においては「運動・活動量」の症状を反映しておらず,心不全モデルケースに対して身体活動量を維持・向上させるための運動支援系サービスの選択は少なかった.医療情報の収集では医師からは直接的に得ていたが,コメディカルからは書面上で間接的に得ており,情報提供書の有効性が高かった.【結語】CMの心不全疾患理解度に比して運動支援系サービスの選択が少ない原因として,身体活動量を含めた運動療法の重要性の認識が低く,在宅心臓リハビリテーションを推進するうえでの課題になっていると考えられた.
著者
福岡 達之 道免 和久
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-109, 2019-02-18 (Released:2019-04-03)
参考文献数
15

小脳失調は,小脳あるいは小脳との連絡経路が障害される疾患によって生じ,発声発語,嚥下機能にも影響を及ぼす.失調性dysarthriaでは発話に関連する運動制御や協調運動の障害により,不明瞭な構音,断綴性発話,爆発性発話など特徴的な症状を呈する.小脳系の障害による嚥下障害の病態は明らかではないが,嚥下器官に生じる失調症状により咀嚼や食塊形成,送り込みの運動障害をきたすと考えられる.小脳失調を伴うdysarthriaと嚥下障害のリハビリテーション医療は,原因疾患や合併する症状によって異なり,脊髄小脳変性症のような進行性疾患では病期に応じたアプローチが重要である.
著者
道免 和久
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.177-182, 2001-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
10 5

リハビリテーション(以下リハビリ)で重要な運動学習の概念を整理し,脳研究から明らかになった運動学習理論のリハビリ治療への応用を紹介した.古くからリハビリにおける運動学習で重要と言われてきたエングラムの概念は,現代の運動学習理論では,教師あり熟練学習における内部モデルの構築や順序学習の中に見いだすことができる.そのうち,内部モデルの再構築をめざす運動療法をフィードフォワード運動訓練と名付け,大脳錐体路障害の片麻痺患者の患側上肢で実践した.その結果,フィードバック誤差学習の回路が残存する例では,運動課題の繰り返しによって,徐々に運動のなめらかさの指標が向上し,運動学習が成り立つことがわかった.今後,運動学習理論をリハビリ治療の中で再検討することが重要である.
著者
森 明子 上村 洋充 髻谷 満 曽田 幸一朗 眞渕 敏 川上 寿一 道免 和久
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【はじめに】デグロービング損傷は機械を扱う労働者が機械に巻き込まれ上肢を受傷するケースが多いが、下肢の受傷ケースは少ない。歩行獲得に向けて理学療法士の役割は大きいにも関わらず症例報告はほとんどない。そこで今回、早期より下腿デグロービング損傷と足関節伸筋腱断裂を伴った症例を経験したため報告する。<BR>【症例】19歳女性。平成17年4月25日列車脱線事故により、右下腿デグロービング・足関節脱臼、左足関節内果骨折、左前腕骨折受傷。その他重篤な外傷なし。右足関節伸筋腱すべて断裂していたため同日、縫合術施行。血液検査データはCK1855U/l、白血球15500/μl、第3病日ではCK3448U/l、CRP12.1mg/dlと高値であった。表皮の欠損が広範囲のため第31病日より右下腿創部にハイドロサイト、第36病日よりフィブラストスプレーを使用開始した。第75病日、全荷重許可後より右下腿皮膚形成の急速な進行がみられた。<BR>【理学療法経過】第15病日より理学療法(以下PT)開始。右長下肢、左短下肢ギプスシーネ固定中。右膝屈曲は禁忌。左下肢は踵部での全荷重可能。寝返り、起き上がりは痛みの範囲内で自立。立ち上がりは左踵骨のみの荷重で介助下にて可能。左下肢筋力は4レベル。第24病日、右下肢は短下肢ギプスシーネに、左下肢は軟性装具へ変更。右膝ROM、右大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力強化を等尺性運動にて開始。また左足関節装具装着にて左下肢全荷重開始。第30病日、右下腿ギプスシーネ除去し右足関節・足指自動運動開始。第36病日、PT室にて右下肢1/3荷重開始。第39病日、右足関節・足指他動運動開始。第65病日、右下肢1/2荷重で歩行練習開始。第75病日、右下肢全荷重、両松葉杖歩行、自転車エルゴメーター開始。第88病日、軟性装具装着下にて歩行自立。第99病日、装具なしにて病棟内歩行自立し、第120病日には病院内歩行許可となり、第151病日、自宅退院となる。退院時の右足関節可動域は背屈10°、底屈30°。左右片脚立位は30秒以上可能。階段昇降は自立。ジャンプ、ランニングは困難であった。<BR>【考察】デグロービング損傷の場合、皮膚の再生や創部への負荷を考え、早期からの荷重や歩行は困難とされることを臨床上経験することが多い。しかし、本症例では感染に注意しハイドロサイトやフィブラストスプレーを併用し、創部の浮腫や腱への負担を注意しながら早期から荷重・歩行練習行うことで順調な経過を得ることができた。荷重・歩行は筋ポンプ作用による筋血流量増加や、皮膚への血流量の増加につながり、皮膚組織の再生にも寄与したのではないかと考えられる。損傷部位の組織修復過程を考慮した治療が肝要である。<BR><BR>
著者
竹林 崇 花田 恵介 内山 侑紀 道免 和久
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.662-671, 2016-12-15

要旨:脳卒中後に非流暢性失語と右片麻痺を呈した慢性期の一症例に対して,両側の一次運動野への経頭蓋直流電気刺激と総指伸筋に対する末梢電気刺激を用いたニューロモデュレーション(Neuro-Modulation;以下,NM)後にCI療法を実施した.その結果,麻痺側上肢のFugl-Meyer Assessmentは,臨床上意味のある向上を示した.さらに,標準失語症検査における呼称を含む言語機能に改善を認めた.本症例報告は,NMとCI療法による手段的・応用的作業における麻痺手の使用が,言語機能を改善する可能性を示した.この報告により,作業療法の一部が言語練習を補完する可能性が示唆された.
著者
野崎 園子 芳川 浩男 道免 和久 土肥 信之 石蔵 礼一 安藤 久美子
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

メトロノームによる嚥下訓練とカプサイシンゼリーの6か月間の嚥下訓練における、在宅での長期継続性と訓練の長期効果について検討した。メトロノーム訓練では、12名中10名が継続。嚥下造影(VF)評価では口腔移送時間の短縮と咽頭残留の減少を認めた。肺炎発症はなく、5名でむせや咳が改善した。カプサイシンゼリー訓練では、15名中12名が継続、VF評価は有意な変化は認めなかったが、4名で嚥下自覚症状の改善がみられた。肺炎発症は2名であった。メトロノームによる嚥下訓練は、長期継続可能性と長期訓練効果が期待できる。
著者
森下 慎一郎 眞渕 敏 山崎 允 笹沼 直樹 花田 恵介 安東 直之 道免 和久 岡山 カナ子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.B0232-B0232, 2006

【目的】<BR> AHCPR(健康ケア政策局・研究局)のガイドラインにおいて、褥瘡は自分自身で体位交換することのできないベッド上や車椅子上の患者に発生のリスクが高いとされている。今回我々は、仙骨部に褥瘡を伴った症例と伴わなかった症例、対麻痺2例を対象に栄養状態、ADL、骨突出部圧の状態を調査し比較検討した。<BR>【方法】<BR>(対象)対麻痺2例。症例1:61歳。男性。診断名:肝細胞癌。硬膜外血腫。現病歴:某年12月、肝細胞癌摘出術施行。術後硬膜外血腫発症し、両下肢不全麻痺が出現。入院期間中、誤嚥性肺炎の為、2週間ICUに入室。症例2:58歳。男性。診断名:脊髄炎。現病歴:某年4月、当院神経内科に入院し、脊髄炎と診断される。脊髄炎由来の両下肢不全麻痺を呈していた。<BR>(調査項目)褥瘡評価はDESIGNを使用。栄養状態は総蛋白(TP)、血清アルブミン(Alb)、ヘモグロビン(Hb)を測定。ADL評価はFIMを使用。褥瘡部の圧測定は簡易体圧計セロ(ケープ社製)を用いて背臥位、ベッドアップ肢位、側臥位、車椅子坐位で測定。<BR>【結果】<BR>褥瘡(DESIGNの合計点数):症例1は入院から5週後、仙骨部に褥瘡が発生した。14週時で8点、25週時には22点と悪化を辿った。症例2は入院期間中、褥瘡は発生しなかった。<BR>栄養状態:症例1は14週時からAlb、Hbは低値を示し、25週まで変化は無かった。症例2は8週時でTP、Alb、Hb全てにおいて低値を示していたが、13週ではTP、Hb共に改善を示した。<BR>ADL(FIM):症例1は14週時で合計点数が60点であったが、全身状態悪化に伴い18週以降は48点と低値を示し続けた。症例2は訓練開始時は61点であったが、13週の時点で80点となった。<BR>仙骨部体圧:症例1は背臥位の圧は高く、ベッドアップの上昇に伴い圧が高くなる傾向があった。症例2は背臥位や車椅子坐位での圧は高いものの症例1と比べると低かった。<BR>【考察】<BR>症例1は入院から5週後、仙骨部の褥瘡が発生した。栄養状態をみると、低カロリー状態や鉄分欠乏による貧血状態が継続していた。また、ADLは経過と共に低下し、褥瘡も悪化する傾向を辿った。逆に症例2は経過と共にADLの向上を示した。ADL向上は離床を促し、同一肢位予防にも繋がる。従って、褥瘡予防や治療の点でADL向上は重大だといえる。一方、骨突出部圧をみると症例1は背臥位やベッドアップ肢位での仙骨部圧は高かった。ベッド上の同一肢位により軟部組織が虚血性変化を起こし、褥瘡が悪化したのではないかと考えられた。<BR>今回の2症例をみると症例1のようにADLが低下し、褥瘡形成部に過度の圧がかかる場合には積極的に離床を進めていかなければならない。ポジショニングや除圧方法の指導だけでなく、離床やADL向上は褥瘡予防や治療に重大であると考えられる。
著者
大塚 友吉 道免 和久 里宇 明元 園田 茂 才藤 栄一 椿原 彰夫 木村 彰男 十野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.731-735, 1994-10-18
被引用文献数
10

60歳以上の高齢者において握力測定法とその正常値について検討を行った.握力測定法については,握力計の握りの幅が5cm前後であれば問題なく,また体位については,座位または立位で測定すると臥位での測定に比べ有意に大きな測定値が得られた,そこで,疾患群への応用を考慮して,座位で,握力計の握り幅は5cmとし,被験者による若干の修正を許可して,60歳以上の健常高齢者における握力の正常値を求めた.男性に比べ,女性において,加齢の影響が強い傾向にあった.また,対象を運動群と非運動群とに分けた場合,前者では,後者より握力が有意に強く,ゲートボールなど運動を行うことが,高齢者の握力維持に有効である可能性が示唆された.
著者
中尾 雄太 山下 泰治 齋藤 翔太 金森 雅 南都 智紀 笠間 周平 内山 侑紀 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.64-68, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
18

症例は63 歳男性,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者である.上肢の巧緻運動障害,歩行障害,体重減少で発症し,ALS と診断された.その後,緩徐に呼吸機能と嚥下機能が低下し,夜間NPPV 導入および軟菜食,水分にとろみ付けを行い自宅で生活していた.今回,誤嚥性肺炎による呼吸不全のため救急搬送され,気管切開・人工呼吸器管理などの集中治療のため安静臥床を要した.舌圧を含む嚥下関連筋の急激な筋力低下を認めたことから,原疾患の進行のみならず,臥床に伴う廃用症候群の合併を考慮し,負荷量に留意した舌筋の筋力増強訓練を施行した.その結果,最大舌圧および嚥下機能の改善を認め,3 食経口摂取となった.ALS においても,廃用の要素が大きい際には嚥下筋の筋力増強訓練は有効である可能性が示唆されたため,文献的考察とともに報告する.
著者
大迫 絢佳 若杉 樹史 梅田 幸嗣 笹沼 直樹 児玉 典彦 内山 侑紀 道免 和久
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E-160_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】 多系統萎縮症(multiple system atrophy:以下, MSA)は, 進行性の神経変性疾患であり, 小脳性運動失調, 自律神経障害, パーキンソニズムが生じると言われている. MSAにより生じるパーキンソニズムは, レボドパ製剤に対する反応性が乏しく歩行障害の進行が早いと述べられている. 本症例はパーキンソニズムが優位に出現するMSA with predominant parkinsonism (MSA-P)であり, 小刻み歩行を呈していた. MSA-Pの歩行障害に対する理学療法の報告は少ないが, トレッドミル歩行がパーキンソン病患者の歩行障害に有効であるという報告は数多く見受けられる. そこで今回我々は, MSA-P患者の小刻み歩行に対しトレッドミル歩行訓練を実施し歩行能力の改善が得られたため報告する. 【症例紹介】患者: 80歳代男性.診断名: MSA-P.現病歴:診断3ヶ月前に動作緩慢や発話困難自覚.診断2ヶ月前より嚥下障害や排尿障害,起立性低血圧が生じ精査後にMSA-Pと診断された. Mini Mental State Examination 24/30点であり,固縮・姿勢反射障害・小刻み歩行を呈していた.すくみ足は認められなかった.投薬はドパコール600mg/日,ドプス600mg/日であり起立性低血圧を是正後の薬剤,投薬量の変更はなかった.【経過】理学療法はトレッドミル(Senoh社製)の歩行速度を2.0-2.5km/hに設定し, 聴覚刺激を入れながら1日5-8分間, 週5日4週間実施した. トレッドミル歩行訓練前後の理学療法評価(介入前→介入後)では, 膝関節伸展筋力は左右共に著変なかった. バランス評価は, Mini-BESTestで, 12→17点(内訳: 予測的姿勢制御3→4点, 反応的姿勢制御1→1点, 感覚機能2→4点, 動的歩行6→8点) であった. 歩行能力は歩行器歩行監視→杖歩行監視となった. 10m歩行(杖歩行)は17.41→11.88秒, 歩数は29→20歩であった. Timed up and go testは28.38→17.35秒, 歩数は33→18歩であった. FIMは71→81点(内訳: 清拭2→5点, 更衣(上)4→5点, 更衣(下)4→5点, トイレ動作4→6点, 排尿管理4→5点, 排便管理1→2点, ベッド・車椅子移乗5→6点, トイレ移乗5→6点, 歩行5→6点)であった. 【考察】 本症例はトレッドミル歩行訓練を実施後,10m歩行, Mini-BESTest, TUGにおいていずれもMinimal Clinically Important Differences(他疾患の値も含む)を上回って改善した.Mehrholzら(2010)はトレッドミル歩行訓練は歩行速度・歩幅の改善が生じると述べており, 本症例も同様の結果を示した. 岡田ら(2004)はトレッドミル歩行では床面が移動するため支持基底面が受動的に後方に変位し, 前方への重心の移動量が増大すると述べている. 本症例もトレッドミル歩行を繰り返した結果, 患者は律動的に前方へ重心移動される機会が増え, 歩幅の増大やMini-BESTestの改善につながったと考える. 歩幅が増大したため歩行速度も上昇し歩行能力の改善に至ったと考える. 本症例より, MSAによるパーキンソニズムを呈した小刻み歩行に対しても, トレッドミル歩行は歩行能力の改善に有効であることが示唆された.【倫理的配慮,説明と同意】本報告は, 対象者に十分な説明を行い同意を得て実施している.
著者
金森 雅 中尾 雄太 堀川 康平 内山 侑紀 児玉 典彦 道免 和久
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1036-1041, 2018-12-18 (Released:2019-01-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

Constraint-induced aphasia therapy (CIAT) is becoming increasingly popular worldwide. It is based on the theory of CI therapy, which is supported by considerable evidence as being useful for rehabilitation after stroke. The CIAT-II protocol (Johnson et al., 2015) was modified to a Japanese version, consisting of intensive training using five expressive language exercises, with shaping and a transfer package for 3 hr/day for 15 consecutive weekdays. We assessed outcomes using the Standard Language Test of Aphasia (SLTA) and Verbal Activity Log (VAL) before and after therapy. We confirmed some improvements in language function using the SLTA and remarkable improvement in VAL amount-of-use scores. Language function and communication skills can be improved using CIAT in patients with chronic aphasia, based on their language function evaluation. The present findings suggest that CIAT might be effective as speech therapy for Japanese patients with chronic aphasia.
著者
小山 哲男 道免 和久
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.868-876, 2020-09-18 (Released:2020-10-22)
参考文献数
43

背景:MRI拡散テンソル画像(DTI)は脳内神経線維を評価する新しい画像診断である.われわれは,急性期脳梗塞により失語症を呈した患者を対象にDTI撮像を行い,同年齢層の対照群との比較のもと,失語症の責任病巣を検討した.方法:初発脳梗塞後14~21日目の失語症患者においてDTIを撮像した.撮像データよりfractional anisotropy(FA)画像を作成し,tract-based spatial statistics(TBSS)解析を行った.失語症群と対照群において,脳画像の群間比較を行った.さらに,個々の症例のTBSSデータに左右の弓状束を関心領域(ROI)に設定してFA値を抽出した.FA値の左右比について,失語症群と対照群の群間比較を行った.結果:解析データベースは失語症群10名と対照群21名であった.脳画像の群間比較では,失語症群において左弓状束FA値が統計的有意に低値であること示された.症例ごとにFA値を抽出したROI解析では,失語症群においてFA値の左/右比が統計的有意に低値であることが示された(中央値[範囲]:失語症群0.955[0.739~1.023].対照群1.006[0.982~1.088];Wilcoxon順位和検定p=0.0001).考察:脳梗塞急性期の失語症患者において,左大脳半球の弓状束FA値の低下が示された.急性期患者においては,慢性期で観察される神経的回復が起こっているとは考えにくい.急性期患者を対象とした本研究の知見は,左弓状束が失語症発症に重要な神経束であることを示唆する.