著者
安松 健
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.79-96, 2021 (Released:2021-04-15)

KJ法を正しく実践するためには、要素還元主義や主客二元論を乗り超える理論的な理解が必要である。そこで本研究では、KJ法の理論的展開をドゥルーズのアジャンスマン概念を用いて行い、その例証として、体験型宿泊施設のサービス開発のために作成されたKJ法図解をアジャンスマン視座にて分析し、その創出コンセプトがサービス・デザインに貢献したことを確認する。その結果、KJ法をアジャンスマン概念にて発展的に理解することは、創造的統合の実践に有用であることを示す。
著者
安松 健
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.53-67, 2019 (Released:2019-04-12)

クリエイティブ思考が注目され様々な手法があらゆる現場に導入されているが, アブダクティブな統合思考の実践は手法とその実施における課題がある. そこで本研究では, まず, 統合思考の理論と手法を確認した上でKJ法に着目し, 各手法について先行研究を元に評価し, ビジネスワークショップに適した手法を選び, さらにその改善方法を提示した. 次に, ワークショップ実施の成功要因として同意や承認ではなく反論や異見という葛藤・対立・コンフリクトの重要性を議論した上で分析枠組みを設定し, ワークショップの実施調査を行い, 定量的・定性的に分析をした結果, 「反論・異見などの対立・葛藤」が成功要因として重要であることが確認できた.
著者
芦野 由己 川本 達郎 安松 健
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.4Yin232, 2022 (Released:2022-07-11)

本研究は,定性的アプローチにて生成した自然言語データを,機械学習技術を活用したAskaにて分析を行い,結果を人が行った分析と比較することで有用性を評価し,自然言語データの分析手法の一つとして提言することを目的とした.方法については,創造的ワークショップ手法にて書き出した個々の考えの文章データをAskaに投稿し,各投稿データの相互評価を行った. そして, この関係データ(グラフデータ)の行列において要素の並び順を最適化してデータ集約を行い,このAskaとワークショップの結果を比較した.Askaによる分析結果は,文章に含まれる特定単語による単純な整理・分類ではなく,全体の意味を捉えたグルーピングが行われていることを確認した.人が行ったワークでは各々のデータの捉え方が加味されるため,機械学習よりも細分化されより抽象性の高いグルーピングが行われていた.しかしながら,Askaの結果は意見間の連続性がみられるとともにより概略的であり,全体像の把握が容易であった.このように,Askaと創造的ワークショップを統合的に用いることで, より合理的に意見を集約・理解することができることを示した.
著者
田中 友理 加瀬 佳樹 安松 健
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3Yin205, 2022 (Released:2022-07-11)

芸術分野においても人工知能による様々な作品が誕生しているが,「芸術家が人間であるからこそ,人間に伝わる感動があるのではないか」など疑問の声も少なくない.このような中で議論を進めるには,まず「人が芸術から受ける感動」とはどのようなものか理解していくことが重要である.そこで,本研究では「人が芸術作品から感動を受ける構造」を明らかにする.具体的には,「人生で"視覚を通し"最も感動した芸術作品」についての「感動要因」及び「人間的特性」を主な調査項目とした感動経験についてのアンケート調査を実施した.因子分析の結果,感動要因からは7つの因子,人間的特性からは8つの価値観が抽出された.更に,ベイジアンネットワークにて芸術作品情報,感動要因及び人間的特性等を構造化し,感度分析したところ,美学研究において論じられてきた美的範疇に関連する概念が,芸術作品情報,感動要因及び人間的特性等の関係性において定量的に表現されていることを確認できた.これらの美的類型と人間的特性の構造分析は,美的研究を裏付け,人間の芸術的感性を理解する基礎的知見の一つとなる.