著者
林 東佑 鳥海 不二夫 田中 幹人
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2B6GS1004, 2022 (Released:2022-07-11)

子宮頸がんを防ぐためのHPVワクチンは,ワクチンに反対する世論により2013年から積極的推奨が中止さえていたが,2021年末に再び再開された。この研究は、日本で最も利用が盛んなソーシャルメディアであるツイッターでHPVワクチンをめぐる世論がどのように変化したのかを分析した。 まず、リツイート·ネットワーク分析により、ワクチン反対グループとワクチン賛成グループが明確に二分されていることを確認した。 また、初期に少数派であったワクチン賛成グループが2016年をもって多数派となったことが示された。 さらに、両グループが主に引用する外部サイトにも違いがあることを確認した。これらに基づき我々は、右往左往したワクチン政策に関連する世論がどのように変化したか、そしてワクチンに対して異なる意見を持っていた2つのグループがどのような行動の違いを示したかを明らかにした。
著者
安永 遼真 熊谷 雄介 道本 龍
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2P4GS1002, 2022 (Released:2022-07-11)

マーケティング・サイエンスは,科学的な手法を用いてマー ケティングにおける意思決定の質を向上させる取り組みである.マーケティング・サイエンスは,個人単位のデータ(個票) に対する分析と,個票を集計したデータに対する分析とに大別できるが,近年は個票データを用いた手法が特に盛んに研究されてきた.しかし,プライバシー保護の潮流や技術規制に伴い,個票データの収集や分析に対する障壁が高くなりつつある.そのため,集計データのみからマーケティング活動に対する示唆を得られるMarketing Mix Modeling (MMM) に注目が集まっている.MMMは,広告の投対効果を把握し,予算配分を最適化するために用いられる市場反応分析手法の一種である.MMMは1960 年代に提案された問題設定だが,これまで産業界では調査会社や広告会社が独自に構築・提供しており,詳細な技術仕様は各社の独自ノウハウとなっていた.しかし,近年,産業界から論文やオープンソースの実装が多数公開され,新たな潮流が生まれつつある.本論文ではこれをMMMの「再発見」と捉え,その経緯と研究動向,課題について論じる.
著者
松本 悠太 林崎 由 北山 晃太郎 舟山 弘晃 三田 雅人 乾 健太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3Yin239, 2022 (Released:2022-07-11)

敬語は日本では社会生活上でのコミュニケーションを円滑に行う上で重要とされているが,敬語を適切に使い分けることは日本語を母語としない日本語学習者にとって困難である.このような問題に対して,常体文を自動的に敬体文へ変換してくれるようなシステムの開発についてはほとんど議論がされておらず,またそのようなシステムを評価するためのデータも存在しないのが現状である. 本研究では任意の常体文に対して,意味を保持しつつ適切な敬体文へ自動変換を行う敬語変換という新たなタスクを提案する.また,本タスクの確立に向けた,データアノテーションスキームおよび評価データセットを提供した.さらに,文表現の分解手法を用いた調査によって敬語変換タスクをスタイル変換タスクの一種として見なして解くことの妥当性および実現可能性を示す.
著者
尾崎 花奈 十河 泰弘
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4D3GS602, 2022 (Released:2022-07-11)

特許情報は、企業が技術潮流や競合他社の状況を把握する上で重要な情報である。特許の俯瞰解析は、着目する技術分野の特許集合のクラスタリングと可視化により、特許を俯瞰的に観察し、自社の位置づけや競合企業の動向の把握を支援する。各クラスタにおいては、クラスタラベルと呼ばれる代表的なキーワードをユーザに示すことで、クラスタ内の特許の技術的な特徴を捉えることが可能である。しかし、同一分野に属する特許集合をクラスタリングした場合、どのクラスタにも高頻度で出現する単語が存在するため、クラスタ内で高頻度の単語をラベルとすると、ラベルがクラスタ間で重複してしまうという課題があった。そこで本報告においては、特許文書中の複合語をラベルの対象として、他クラスタとラベルの重複を防ぐクラスタラベリング方法を提案する。実験において特許公報を対象とした評価を行い、本手法の有効性を確認した。
著者
伊藤 海斗 加嶋 健司
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4K1GS101, 2022 (Released:2022-07-11)

確率分布を所望の分布に効率よく輸送する問題(最適輸送問題)は,機械学習を含め様々な応用が期待されている.本研究では,動的システム上で離散分布を所望の離散分布に輸送する問題を考える.これはエージェントの集団を所望の分布形状に最適制御する問題とも見なせる.通常の最適輸送と比較して,動的システム上の最適輸送特有の問題は,各輸送コストを知るために最適制御問題を解く必要があり,そして制御に要する実時間性を保って最適輸送問題を解かなければならないことである.そこで本研究では,モデル予測制御(MPC)とSinkhornアルゴリズムを組み合わせた動的な輸送アルゴリズムを提案する.MPCは各時刻で有限時間の最適制御を解くことで実時間最適制御を実現する手法である.またSinkhornアルゴリズムは,エントロピー正則化最適輸送を効率的に解く反復計算手法である.これらを活用し,具体的には最適制御計算とSinkhornアルゴリズムの反復を並行して行うことで,実時間性をもつ効率のよい輸送法を提案する.特に,対象システムが線形の場合に,提案手法で制御されるダイナミクスの有界性や漸近安定性といった重要な性質を示す.
著者
渡邊 凌也 井原 史渡 若林 直希 杉浦 巧 高村 大輝 栗原 聡
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1M1OS20a02, 2022 (Released:2022-07-11)

冪乗則に基づいた移動を行う人をエージェントとし,ネットワーク関係で繋がった都市を環境としたマルチエージェントシミュレーションを構築することで,COVID-19の感染現象に関する考察をした.COVID-19の感染現象の解明の多くには,SIRモデルを代表とする数理モデルが利用されているが,解釈性は高いものの,人々の接触ネットワークを均質なモデルで仮定しており,現実を反映しているとは言い難い.そこで,現実に即したネットワークモデルによってシミュレーションを行うことで,ワクチン接種や集団免疫に関する考察をした.現実の感染現象を観察することで得られた都市のネットワークに関する仮説に関して,シミュレーション内でいくつかのシナリオを比較することで検証することができた.本研究で得られた性質は,COVID-19だけではなく,他の感染症にも応用可能であり,数理モデルと比較することで,感染症の伝播に対する理解が深まると考えられる.
著者
柏原 悠 松原 崇
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1F5GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

生成モデルによる異常検知は,正常画像のみで学習したモデルで,入力画像と再構成画像の差異により異常画像であるかどうかを判断する方法が一般的である.しかし,既存の生成モデルでは再構成画像が不鮮明であったり,元の画像から回転するなどの問題がありパッチベースのモデルや潜在変数空間を使用したモデルに比べて異常検知の性能が劣っている.工業用製品における欠陥品の検出など現実世界の異常検知では,検出対象の物体の向きが同一でないことや,再構成画像が不鮮明なことによる微小な傷の見逃しにより,既存の生成モデルでは異常の検出に失敗することがある. そこで,我々は鮮明な再構成が可能であるDenoising Diffusion Probabilistic Models(DDPM)をベースのモデルとして,異常検知で拡散過程を使用しない方法により,画像データの回転に対して頑健な異常検知を可能にした.本研究では工業用製品のデータセットであるMVTeC ADを使用しモデルの評価を行い,既存の生成モデルによる性能を大幅に上回る0.92のAUROCを達成した.
著者
西田 知史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3F4OS2301, 2022 (Released:2022-07-11)

AIは近年目覚ましい進歩を遂げているが、人間がAIに対して潜在的に有する負のイメージはいまだ払拭されていない。本研究では、そのようなAIに対する負のイメージが、AIの生成した視覚情報に対して、実際の見た目とは無関係に人間の選好を低下させるか検証を行った。この検証のため、敵対的生成ネットワークによって生成した様々な顔画像の魅力度を評定する実験を実施した。ただし、被験者に対しては、半分の画像は実在人物の顔画像、残り半分の画像はAIが生成した架空の顔画像だと虚偽の教示を行った。この実験デザインにより、視覚特徴とは無関係に、被験者の先入観のみが魅力度評定に与える影響を評価できる。結果として、AI生成画像という教示が、魅力度評定を下げるとともに、大脳皮質の広い領域にわたり脳活動パターンを変化させることを確認した。これにより、対象の視覚情報がAI生成物だという先入観のみによって、その情報に対する人間の選好が負のバイアスを受けるという行動レベルおよび神経レベルの知見が得られた。
著者
山内 智貴 中川 慧 南 賢太郎 今城 健太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2J4GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

近年,金融分野における機械学習に基づく定量的予測モデルの開発が活発化している.しかし,機械学習ベースの株価予測モデルは「市場の効率性」と「予測モデルの解釈可能性」の2つの課題により,実用化が困難である.これらの課題に対して,解釈性を担保しつつ短期的に高い予測精度のルールを進化的に実現するTrader-Company(TC)法がある.しかし,TC法はその性質上,市場レジームの急激な変化を考慮しないため,変化によって予測精度が悪化する可能性がある.そこで本研究では,レジームの変化に対する高いロバスト性を実現するため,Multiple-World Trader-Company法を提案する.提案手法では,TC法において単純で解釈可能な予測アルゴリズムであるTraderを管理するCompanyモデルを弱学習器として,レジーム単位で分割した学習データを複数Companyが個別に学習する.実データを用いた実証分析により,提案手法がベースライン手法と比較して良好な予測精度を達成することを示す.
著者
伊藤 寛武 金子 雄祐
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2P4GS1004, 2022 (Released:2022-07-11)

インターネット広告配信は、インターネット業界の主要なビジネスの一つです。その中でも、リターゲティング広告は特に効果的な配信形態として知られています。その一方で、リターゲティング広告の配信効果については、いまだに学術的な議論が続いています。本研究では、リターゲティング広告における広告入札と配信成果の間にある因果関係を、広告配信オークションの最低入札価格を閾値とした回帰不連続デザインを適用して推定した。実際のリターゲティング広告配信プラットフォームのデータを用いて推定を行った結果、多くの広告主において、アプリ起動や課金などの広告配信における主要なKPIに対してポジティブなリフト効果を確認することができました。
著者
三浦 大樹 浅谷 公威 坂田 一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3M4GS402, 2022 (Released:2022-07-11)

今日の社会において,ソーシャルメディアは情報拡散に重要な役割を果たしている.しかし拡散されていく情報には誤っているものも多くあり,社会的な問題となっている.SNS上における誤った情報の拡散に関しての研究は多くなされており,その拡散力の強さなどが知られている.しかし既存の研究は情報拡散時点のユーザーの行動に焦点を当てており,情報拡散を引き起こすユーザーの内在的な特性については幅広く分析されていない.本研究ではユーザの過去にも焦点を当てることで陰謀論に取り込まれるユーザの本来の特性と彼らに生じる変化について新たな知見を得ることを目指す. そこで本研究ではコロナ禍だけでなく過去のユーザ間のリプライ・リツイートネットワークにもクラスタリングを施し,コロナ禍においてTwitterで多く使われたハッシュタグについて網羅的に分析を行った.その結果,コロナは実は存在しないと考えるようになった人々がコロナ禍に入ってから急速に集まり独自のコミュニティを作って孤立化したことが明らかになった.
著者
葛谷 潤 荒井 ひろみ
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4G3OS4b02, 2022 (Released:2022-07-11)

人工知能(AI)システムの解釈可能性が求められるようになったことを受け、自らの振る舞いを説明できる説明可能AIの研究が進められている。従来の研究が主に焦点を合わせていたのは、振る舞いのきっかけとなる原因やそれを支えるメカニズムについての説明である。しかし、説明可能なAIに期待される効用を踏まえると、別の種類の説明、すなわち目的帰属型の説明を考慮する必要があると思われる。本報告の主な目的は、生物学・心・人工物の哲学の知見に基づき、目的帰属型の説明とは何かを定式化した上で、AIシステムを含む人工物の社会的受容にとってそれがもつ重要性を指摘することである。本報告では、まず説明可能なAIに期待される効用と従来の研究を整理し、次に目的帰属型の説明の定式化と人工物の社会的受容に対するその重要性の指摘を行い、最後にAIシステムの振る舞いの目的ないし機能を同定するための方策を考察する。

4 0 0 0 OA 意識とAI

著者
新川 拓哉
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3F4OS2305, 2022 (Released:2022-07-11)

この発表では、AIが意識をもつのかをどう検証するのか、現行のAIが意識をもちうるとすればどのような種類のものなのか、意識をもつAIに対してどのような倫理的配慮が必要なのか、といった問いに取り組む。方法としては、現在提案されている意識の指標や理論を手掛かりに、「意識についての予防原則」も考慮しながら検討を行う。検討の結果として、現行のAIが「思考的な種類の意識」をもつ可能性を提示する。また、ロボットに痛み等の感覚的意識をもたせようとする試みを倫理的観点から評価し、そうした研究に対する倫理的制約の枠組みも合わせて提案する。
著者
高野 海斗 岡田 知樹 清水 裕介 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3K4GS1003, 2022 (Released:2022-07-11)

有価証券報告書には,企業の業績や事業リスク,ESG活動などの様々な情報が記載されており,先行研究では投資判断に有益な情報として,業績要因文をテキストマイニングするモデルが提案されている.上記情報以外にも有価証券報告書には「配当政策」に関する記述が存在し,配当の基本方針や今年度の配当金に関してだけでなく,将来の配当方針や配当性向に関して記載がある.また将来の配当政策のうち増配に関する記述は公表後に株価の上昇をもたらすことが知られており,投資判断に有益な情報である.したがって,将来の配当は専門知識を持ったアナリストが様々な情報をもとに予測を行っているが,人手が限られているため大企業を中心に行われている.そこで,本研究では有価証券報告書の配当政策にどのようなことが記述されているかを調査し,将来の配当を予測するのに有効なテキストの自動抽出を試みた.その結果,本研究で作成した学習データを用いることで,高い精度で将来の配当政策に関する記述を抽出できた.これにより将来の配当政策に関する情報が効率的に自動抽出でき,新しい投資判断基準や投資戦略の構築などへの応用が期待できる.

3 0 0 0 OA ゴリラテスト

著者
ガンバト ニャムフー 濱田 直希 山崎 大地 下斗米 貴之 高田 敦史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2P6GS1003, 2022 (Released:2022-07-11)

モバイルゲームは世界中の人々が多種多様な端末でプレイするため、さまざまな条件下での動作テストが必要になる。2週間という短いリリースサイクルのために、ゲーム本体が変更されてもテストコードを変更せずにすむような自動テストツールが望まれている。KLab株式会社では、モバイルゲームのユーザーインターフェース(UI)を画面から検出してゲームを自動的にプレイするブラックボックステストツール『ゴリラテスト』の研究開発を進めている。本発表では、ゴリラテストの機能であるUI検出、UI操作、シーン認識、性能モニタリング、シーン遷移時間計測などについて紹介する。実際のモバイルゲームにてゴリラテストを実行し、UI検出やシーン認識の所要時間とUI操作の成功率を示す。
著者
鈴木 陽也 秋山 和輝 梶原 智之 二宮 崇 武村 紀子 中島 悠太 長原 一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.4D3GS604, 2022 (Released:2022-07-11)

感情分析とは,テキストから人間の感情強度を予測する自然言語処理タスクである.従来の感情分析モデルは,テキストの書き手の感情(主観感情)の推定性能が十分でないことが知られている.そこで本研究では,感情分析モデルの入力として書き手の性格情報を加え,主観感情の推定に特化させる.本研究で使用する書き手の性格情報は,テキストの書き手に対する性格診断の結果である.プルチックの基本8感情の強度推定に関する評価実験の結果,提案手法による主観感情の推定の性能改善を確認した.
著者
井川 朋樹 梶原 智之 二宮 崇
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2B5GS603, 2022 (Released:2022-07-11)

テキスト平易化とは,文の意味を保持しながら,難解な文を平易な文に変換する自然言語処理タスクである.テキスト平易化により,言語障害を持つ人,子ども,言語学習者などが恩恵を受けることができる.これらの読み手の能力には差があり,その能力に応じた難易度調整が必要であるため,難易度制御可能なテキスト平易化手法が提案されている.しかし,従来手法は単語レベルの難易度に基づいており,文レベルの難易度が考慮されていないという問題点がある.そこで本研究では,文の難易度推定モデルを用いた深層強化学習によるテキスト平易化を提案する.実験の結果,提案手法において,テキスト平易化の評価指標SARIが向上することを確認した.
著者
小寺 聡 仁宮 洸太 澤野 晋之介 勝然 進 篠原 宏樹 赤澤 宏 小室 一成
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2K6OS1b04, 2022 (Released:2022-07-11)

背景:医療AIは社会的に実施され、患者に大きな影響を与えることが期待されるため、医療AIに対する患者の意識を調査することが重要である。 方法:本研究では、患者の医療AIに対する意識を調査する目的でインターネット調査を実施した。性別や年齢を考慮して、定期的に医療機関を受診している1240人、受診していない620人を対象にアンケート調査を実施した。 結果:78.1%が医療用AIを期待しており、47.7%が医療用AIについて不安を感じていた。医療用AIの診断を受け入れた人の割合は、診断精度が高い場合は56.7%、説明が明確な場合は41.4%、診断精度が高く説明が明確な場合は84.8%であった。主治医と医療AIの意見が異なる場合、主治医とAIの診断精度が同じであれば、81.3%が医師の診断を受け入れた。医療AIの診断が間違っていた場合、回答者の65.7%が医師の責任と考えた。 結論:この研究は、医療AIでは正確さと説明責任の両方が重要であり、患者は医療AIよりも医師を信頼していることを示した。
著者
古崎 晃司 江上 周作 松下 京群 鵜飼 孝典 川村 隆浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2E6GS302, 2022 (Released:2022-07-11)

「ナレッジグラフ推論チャレンジ」は説明可能性を有したAI技術の体系化と普及促進を目的とした技術コンテストである.このチャレンジでは,知識グラフとして表現された推理小説を用いた「1.犯人の推定」と「2.推定理由の説明」をタスクとしている.提供する知識グラフは,説明生成に用いられることを念頭に,対象とする小説の追加や知識グラフとして記述する内容の検討等の改良を重ねてきた. 本研究では,これまでの考察をもとに,説明生成に利用することを想定した知識グラフ構築におけるガイドラインを提案する.推論チャレンジで公開している8つの短編推理小説を対象とした知識グラフを元に記述内容の修正方針を検討し,10項目からなる知識グラフ構築のガイドライン案を作成した.さらに作成したガイドラインをそれら8つの知識グラフに適用し,その妥当性の検討を進めている.本発表ではガイドラインの概要と知識グラフに適用して得られた知見を報告する.
著者
児玉 実優 酒井 浩之 永並 健吾 高野 海斗 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3K4GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

近年, 投資家は, ESG(E:環境,S:社会,G:統治)情報を投資判断において重視しており,ESG関連情報をテキストデータから抽出する技術が必要とされている. ESG関連情報は統合報告書に多く記載がある. しかし, 企業によってレイアウトや内容が異なり, 学習データの作成が困難である. そこで本研究では, まず有価証券報告書(有報)から ESG関連情報を抽出する. 有報にも統合報告書ほどではないが, ESG 関連情報の記述がある. また, レイアウトはどの企業も同じであり, さらに XBRL 形式と呼ばれるテキスト形式で配布されているので, テキスト処理を行いやすい. 次に有報から抽出したESG関連情報を学習データとして,BERTモデルをファインチューニングする. 最後に当該BERTモデルを用いて統合報告書からESG関連情報を抽出することで,統合報告書から直接学習データを作成する困難を解決できた. 実際に, 本手法で各企業の統合報告書から ESG 関連情報を抽出した.結果, E,S,Gに関する情報をそれぞれ93.3%,91.7%,77.4%の適合率で取得でき,良好な結果が得られた.