著者
黒田 圭介 安永 典代 磯 望
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2007年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.181, 2007 (Released:2007-04-29)

I.はじめに Hawaii諸島のOahu島は,Waianae山脈とKoolau山脈の2つの開析された盾状火山から構成されており,ホットスポット上に形成された火山島として知られる.Oahu島西部のWaianae盾状火山は2.2-3.8(Ma),東部のKoolau盾状火山は1.8-2.6(Ma)の放射年代をもつ玄武岩体から構成される(Macdonaldほか,1983).Honolulu火山活動は,これらの大規模盾状火山形成後の浸食期を経て再活動した比較的小規模な火山活動の総称で,Oahu島の景勝地であるDiamond Headなどは,Honolulu火山活動によって形成された火山地形である.本研究では,Honolulu火山活動で形成された火砕丘,特にクレーターの地形を解析した結果を報告し,Honolulu火山活動の特徴等について検討する.本要旨では,クレーターを形成した火山噴火の規模と,クレーターの侵食程度について報告する. 図1:研究対象地域地形区分図とクレーター分布 II.クレーター解析方法 1) U.S GEOLOGICAL SURVEY発行の1/24000地形図を用いて,クレーターの比高,直径等を計測した.この結果から,クレーターの体積を推定した.この結果より,火山爆発指数(VEI)を算出し,オアフ島南東部のクレーターを形成した火山噴火の規模を推定した. 2)クレーターの接峰面図を描いて,侵食前の地形を推定した.また,この接峰面図をデジタルデータ化して,定量的に侵食の程度を試算した. III.火山爆発指数(VEI) 火山爆発指数(以下,VEI)は,噴火の大きさの尺度として用いられる.これは噴出物の総量が体積でわかれば決められる値で,0から8までの整数で示され,噴出物の量をA×10i㎥とするとき,VEI=i-4で算出される.VEIは0から8までの値で示され,0が非爆発的噴火,1が小規模,2が中規模,3がやや大規模,4が大規模,5が非常に大規模である. Oahu島南東部に分布するクレーターのVEIと面積の関係を図2示す.おおむね面積が大きくなるほどVEIも大きくなるという結果が得られた.特にVEIが大規模のクレーターは,いくつかの火口が複合した形状を持つものがほとんどである。 IV.侵食度合い 1)解析方法:まず,クレーターごとに接峰面図を描いた.谷埋めの間隔は100mと1000mとした.このクレーターごとの接峰面図と地形図をスキャンし,Illustratorで等高線ごとにトレースした.トレースした等高線の輪は、ピクセル数を数えるため塗りつぶした.このデータをPhotoshopで開き,等高線毎にピクセル数を数えた.図3を見ると,侵食前の地形(B)から現地形(A)のピクセル数を引いた数(C)が,侵食程度ということになる.Diamond Headの560ftでは,7.8%が侵食されたことになる. 2)結果:クレーターの形成年代と侵食程度を図4に示す.形成年代が古ければ古いほど,侵食が進んでいるという一応の結果は出た.しかしながら,侵食の程度は,立地,地質,気候,風量,風向きなどに左右されると考えられるので,今後はそれらを加味しつつ,クレーターの侵食程度や開析具合を検討したい. V.まとめにかえて 1)Oahu島南東部に分布するクレーターの爆発規模は中~大規模であり,小規模は分布しない.また,面積が大きければ大きいほど,VEIも大きい. 2)クレーターの侵食程度を定量的に表すことができた.その結果,クレーターは,侵食が進んでいれば進んでいるほど形成年代が古い傾向が見られた.今後は,クレーターの侵食を左右する要因を加味して,Oahu島南東部におけるクレーターの侵食様式を検討したい.