著者
安永 統男
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.201-208, 1964-12
被引用文献数
1

昭和39年7月から9月にかけて,長崎大学水産学部練習船長崎丸にて東南アジア地域を廻り腸炎ビブリオの分布調査を試みた.基隆,シンガポール,コロンボならびに香港においては港湾内の海底泥土,魚類および魚市場,店頭の魚介類についてBiotype 1の検出を目標に本菌の分離試験を行なった.その結果,シンガポール,香港においてはBiotype 1の濃厚な分布が認められたが,基隆ではBiotype 2以外は検出されずコロンボでは魚類検体からの本菌検出は全くできなかった.ただし,基隆の場合は検体数が不十分であることや検体が適当でないということも考えられ実態を示すものかどうか疑問とされる.これに対し,コロンボの場合は分離状態からみて恐らく本菌の分布は希薄であろうと想像される.また一方,印度洋においては延繩捕獲の魚類から本菌を検出したが,特にクロカワの鰓およびサワラの胃からはBiotype 1の菌を分離することができた.これは外洋における検出例としては最初のことであり興味が持たれる.なお,本菌同定上の特性以外の各種性状について今回分離した菌株とわが国における分離菌株とを比較したところ陽性率において大凡の一致性が認められた.本調査によって東南アジア地方の沿岸海域や魚介類における腸炎ビブリの分布が証明されたが,自然の環境条件が本菌の生存に好適であれば,東南アジア以外の地域においても恐らく本菌の分布がみられるものと想像される.It is presumed that the food poisoning caused by Vibrio parahaemolyticus is closely related with the Japanese custom of taking, sometimes raw, a great many of fishes and shells. At present time, no occurrence of the food poisoning caused by bacteria havin