著者
安永 達也
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

1.圧力ジャンプ法により、炭酸カルシウム懸濁液において二重緩和を見い出した。得られた速い緩和時間は粒子濃度とともに速くなったが、遅い緩和時間はほとんど粒子濃度に依存しなかった。また、前者は【Ca^(2+)】濃度の増加とともに遅くなり、後者は塩無添加の場合、最大値を示した。【Ca^(2+)】および【CO(^(2-)_3)】の吸着量はかなり小さく、結晶成長が起こっているサイト濃度は炭酸カルシウム結晶表面全体のごく一部であり、【Cu(^2+)】および【NH(^+_4)】の吸着等温曲線よりサイトとしてのキンク濃度を決定した。一方、炭酸カルシウム微結晶表面近傍のイオンの動的挙動に重要な役割を演じているゼータ電位は、塩無添加の場合に最大値を示し、塩添加とともに急激に減少した。以上の結果を考慮して解析した結果、速い緩和および遅い緩和をそれぞれキンクサイトへの【Ca^(2+)】の吸脱着および吸着した【Ca^(2+)】の加水分解した状態CaOHへの【HCO(^-_3)】の吸脱着反応に帰属し、結晶成長機構の素過程を明らかにした。2.上法により、リン酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム等の懸濁液においても緩和を見い出しており、現在測定中である。3.ストップトフロー法により、塩化バリウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液を急速混合することにより結晶核形成過程に関する高速現象を見い出しており、現在測定中である。