著者
藤林 哲男 安田 善一 石本 雅幸 鈴木 久人 福田 悟 内木 宏延
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.171-176, 2001-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

スズメバチ刺傷後に多臓器不全をきたした症例を経験した。治療経過と剖検所見を報告した。症例は74歳,男性で,スズメバチに襲われ,約50ヵ所刺され,近医に入院した。受傷12時間後より乏尿となり,翌日(受傷24時間後)に当院ICUに収容となった。収容時,意識清明。血圧190/130mmHg,脈拍113min-1。血液生化学検査では,腎機能障害(BUN:38mg・dl-1,Cr:2.5mg・dl-1),肝機能障害(GOT:10,120IU・l-1,GPT:2,550IU・l-1)および横紋筋融解(CPK:86,290IU・l-1)を認めた。急性腎不全に対し持続血液濾過を,ハチ毒除去の目的と肝障害に対して血漿交換を計5回施行した。総ビリルビン値は漸増し,第6ICU病日頃より意識レベルが低下(Japan Coma ScaleでIII-100,Glasgow Coma Scaleで6点)し,播種性血管内凝固進行のため大量下血をきたし第16ICU病日に死亡した。病理所見では,骨格筋,心筋および脳の散在性融解壊死,肝臓および腎の変性壊死が確認された。ハチ毒には細胞破壊に関与する高分子蛋白質が多数が含まれていることから,救命にはより早期の血漿交換が必要と考えられた。