著者
安田 早苗
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.107-124, 2023-03-17

筆者は、「和光大学表現学部紀要22 号」(2022年)に「「具体」が子どもの美術を参照した理由についての一考察」を執筆し、子どもの美術と前衛美術との関わりについて論じ、子どもの美術と、童詩雑誌『きりん』の関わりが深いことを述べた。『きりん』との関わりでは特に、子どもの美術作品が多く掲載された橋本学級では、詩の時間が多く、自らの感覚を言語化する活動に馴染んでいたことがわかった。平成29(2017)年告示小・中学校学習指導要領(1)では、全教科で言語活動の充実がもとめられている(2)。しかし、図工・美術科はそもそも表現力をはぐくむ活動であり、その意義が感じにくく、取り入れる方法もよくわからない。平成20(2008)年学習指導要領改定の図画工作解説では、図画工作における言語活動について「形や色、そこから生じるイメージを、言葉のように扱いながら、思考したり、表現したり、コミュニケーションしたりする活動」(3)と書かれていている。これは、いわゆる一般的な言葉を使わないということなのだろうか?言語活動は表現活動にとって重要なのか、重要とすればなぜなのか、またその有効な手立てとは何なのかについて、2022年6月22日に、中・高美術の教員免許取得者に対して、和光大学教授松枝到氏に講演をしていただいた。その講演記録をもとに論じていくこととする。丸数字は、2 章以降に引用するため、筆者が便宜的につけたものである。
著者
安田 早苗
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.93-113, 2022-03-17

本稿では、1954 年8 月ころ関西で吉原治良を中心に結成された「具体美術協会」(以下「具体」)が、自らの創作活動のために子どもの制作した作品を参照したのはなぜなのか、その理由を考察するとともに、美術教育とその教師、子ども、それにかかわる現代美術の作家たちが、相互にどのような影響関係にあったかを考えてみたい。また「具体」が重視したポイントについて、「具体」創始者の吉原治良、『きりん』編集者の浮田要三、元中学校教諭で「具体」初期からのメンバーである嶋本昭三、小学校教諭の橋本猛へのインタビュー資料などから結論を導きたい。はじめに、2021 年2 月11 日、筆者の主催したオンラインイベントBloom Studio ZOOM Partyvol.5 で行った山本淳夫氏(横尾忠則現代美術館)の講演「「具体」と子どもの絵」の概要を提示し、その検証をしていく形で論を進めることにする。「子ども」の表記について筆者の文章では「子ども」と統一するが、引用文はそのままの表記とする。なお本文中で使用する「象徴」の語は、美術教育での用語使用に準じている。