著者
久保 知義 安積 敬嗣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.495-500, 1965 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

種々の鞣製革の熱変性を知る目的でコラーゲンおよび鞣剤結合コラーゲンをヘビーカーフより各種の鞣剤を用いて調製し,これらの種々のコラーゲンの熱変性を示差熱分析と熱天秤分析による熱重量変化の測定により検討した.乾熱示差熱分析により,原料コラーゲンも各種鞣剤結合コラーゲンも,ともに130°をピークの頂点とする80~200°の範囲にわたって大きな吸熱ピークを示した.しかし,この温度範囲において熱天秤による熱重量変化はほとんど認められず,また,鞣剤の量および種類によっても変らないことより,この吸熱ピークはコラーゲンの結晶部分の融解によるものと考えられる.また,湿熱示差熱分析によって,熱縮温度よりも10~17°低い温度に吸熱ピークが認められた.これはコラーゲンの非結晶部分の水の存在下での変性によるものと考えられ,湿熱変性開始温度を示差熱分析により知ることができた.