著者
久保 知義 宝山 大喜
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.5-10, 1967-01-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7

異なつたCr2O3含量をもつクロム革に及ぼす比較的高温熱処理(100°~190°C)の影響を物理的性質および 水抽出物の組成の変化から考察した.1. クロム革の熱処理による物理的性質の劣化が認められ,引張強さおよび柔軟度の荷重は増加し,伸びは減少した.しかし,革のCr2O3含量が高くなるにしたがい劣化の程度は比較的少なくなり,また,熱処理時の水分が高水分の場合よりも低水分において熱処理の影響が少ないことを認めた.2. 水抽出物の組成について,溶出蛋白質量,酸度,硫酸根およびpHを測定した.溶出蛋白質量は未鞣製皮の場合に比し非常に少なく,100°~130°C熱処理における溶出量は対照と変らないが,160°~190°Cの熱処理において,Cr2O3含量1%以下の革では大きく増加した.そして,このような傾向は低水析よりも高水分の場合において大きいことを認めた.
著者
久保 知義 中川 成男 近藤 健次郎
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.140-150, 1971

さきに, 皮革の製造工程における皮組織を偏光顕微鏡によっても十分に観察し得ることがわかった。それ故に, 本実験では, 未鞣製皮, ならびにクロム革, ジルコニウム革, 植物タンニン革および植物タンニン再鞣クロム革の線維構造の観察を行ない, また, これらの皮革を比較的高温熱処理を行なった場合のコラーゲンの結晶構造の変化を複屈折性について観察した。1. 皮および種々の鞣製革を偏光顕微鏡で観察すると, 未鞣製皮のコラーゲン線維束の直径は比較的小さく, クロム革あるいはジルコニウム革の鞣剤低含量革のそれは未鞣製皮とほぼ同じであった。しかし, 鞣剤含量がより増加すると, コラーゲン線維束の直径は大となり, 鞣剤を結合することによって線維密度は大きくなり, 多孔性が失われる傾向があった。2. 種々の皮革を比較的高温で処理することによって, 網様層のコラーゲン線維束の直径は減少する傾向が認められ, 熱変化がさらに進むと, 未鞣製皮ならびに鞣製革の鞣剤含量の少ない場合, コラーゲン線維は複屈折性が全面的に, あるいは部分的に失われた。この現象は, 未鞣製皮ならびに植物タンニン革とジルコニウム革において同じ様な傾向で認められ, 水分約30%, 熱処理温度, 130℃以上において認められた。しかし, クロム革はこれらよりきわめて安定であった。3. コラーゲンの結晶構造の熱処理による変化, すなわち複屈折性の変化は, 鞣剤の種類, その量および水分の量によって影響を受けることから, コラーゲンの非結晶部分への鞣剤の結合様式が, コラーゲンの結晶構造にもある程度影響を与えるものであることを示唆している。
著者
久保 知義 安積 敬嗣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.495-500, 1965 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

種々の鞣製革の熱変性を知る目的でコラーゲンおよび鞣剤結合コラーゲンをヘビーカーフより各種の鞣剤を用いて調製し,これらの種々のコラーゲンの熱変性を示差熱分析と熱天秤分析による熱重量変化の測定により検討した.乾熱示差熱分析により,原料コラーゲンも各種鞣剤結合コラーゲンも,ともに130°をピークの頂点とする80~200°の範囲にわたって大きな吸熱ピークを示した.しかし,この温度範囲において熱天秤による熱重量変化はほとんど認められず,また,鞣剤の量および種類によっても変らないことより,この吸熱ピークはコラーゲンの結晶部分の融解によるものと考えられる.また,湿熱示差熱分析によって,熱縮温度よりも10~17°低い温度に吸熱ピークが認められた.これはコラーゲンの非結晶部分の水の存在下での変性によるものと考えられ,湿熱変性開始温度を示差熱分析により知ることができた.
著者
岡村 浩 久保 知義 白山 琢持
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.135-141, 1980-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1977年度ヨーロッパ諸国から入手した中小牛クロム甲革, 計50点を試料革とし, 化学分析値, 機械的性質および物理的性質を比較した結果, 大要次のようになる.1) 西ドイツのクロム甲革 (主としてボックス仕上げ) は植物タンニンあるいは合成鞍剤による再鞣処理程度が少なく, イダリアおよびフランスのクロム甲革 (アニリン仕上げ) は植物タンニンあるいは合成鞣剤による再鞣処理が十分に行われていることが認められた.シュリンク革は, 銀面の平滑なクロム甲革の化学分析値と比較して大きな差がない.スエード革は, 一般クロム甲革に比較して全油分の含有量が多く, 結合性加脂剤が多く使用されているものと考えられた.2) イタリア, フランス製のクロム甲革は, 1kg/mm2荷重時の伸びが大きく, 7mm高および銀面割れ時の荷重が小さい柔軟な革である.これと逆に日本製クロム甲革は, 引裂強さ, 7mm高および銀面割れ時の荷重が最高値を示し, 銀面が硬い柔軟性に乏しい傾向にあった.シュリンク革は, 銀面割れ時の高さが低く, スエード革は国別の差異は見いだされず, 一般クロム甲革に比較して機械的性質が劣っていた.3) 物理的性質では, 一般クロム甲革の耐水性と吸水度 (30分間) に差が見られ, とくに日本製のクロム甲革の耐水性は低かった.シュリンク革は, 一般クロム甲革に比較して, 耐水性が高く, 吸水度 (30分間) が低い値を示し, また耐屈曲性に劣る.スエード革では, 耐水性が著しく低く, 透湿性が比較的高い.