著者
安藤 岳洋
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、主にレーザ蒸散システムの細経化を行った。これまでの研究では、ガルバノスキャナを用いたレーザ走査型のレーザ蒸散システムを開発してきたが、デバイスの形状が箱型だったため、摘出後にできる脳の空間に挿入して使用することは不可能であった。これを解決するために、内視鏡状のデバイスの開発を目指した。本研究では、焼灼用レーザと励起用レーザおよび蛍光取得の光路を同軸にし、細経形状の先端部から側方に光を照射するシステムを開発した。開発した装置は、蛍光計測部、焼灼用レーザ装置、走査機構部、レーザ切り替え部、細径部および制御用PCで構成されている。励起用のレーザ、焼灼用のレーザ、分光器には、前年度で使用したものと同じものを使用している。本研究では405nm~2.97μmという広い範囲の光を使用するため、既存のレンズを用いることが出来ない。そこで、蛍光計測スポットおよび焼灼スポット径を可能な限り小さくするためのレンズ設計を行った。具体的には、2つのレーザ(波長405nmと2.94μm)はコリメートレンズにより並行光として対物レンズに入射するとし、2枚のレンズの曲率半径・厚み・材質の合計8つをパラメータとして、それぞれの光の間の収差を小さくする最適化を行った。その結果、サファイヤおよびフッ化カルシウムの2枚のレンズの構成となった。焼灼点の走査は、回転および直動機構によって行う。中空シャフトのステッピングモータにより、鏡筒周りの回転を行うことで、焼灼点を円周状に走査が可能となる。また、直動ステージにより、鏡筒軸方向の走査が可能となる。これらを組み合わせることにより、円筒状の空間の内面を走査することが可能である。いくつかの評価実験を行い、脳腫瘍にPpIXが集積した状態を模したファントムを用いた実験により、局所的なPpIX蛍光スペクトル計測が可能であることを、ブタ摘出脳を用いた実験により、脳組織の焼灼が可能であることを確認した。レーザ合焦時の蛍光スペクトル計測スポット径は、直径1.6mm程度であることが示された。