著者
福冨 雅夫 安藤 悠人 三谷 羊平
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.94-104, 2020-11-25 (Released:2020-11-25)
参考文献数
41

高齢化のさらなる進行が世界各国で続く中,高齢者の経済的意思決定をより良く理解することが重要となっている.時間選好は経済活動や医療健康行動をはじめとする様々な意思決定に影響を与えうるが,高齢者の時間割引率や時間非整合性は十分に検証されていない.本論文では,高齢者を対象として,時間選好に関する経済選択を含むフィールド実験を実施し,高齢者の時間選好と個人属性の関係を考察する.実験結果より,割引の程度は高齢層における年齢に関して逆U字型の形状をとる傾向にあること,高齢者は現在時点から遠い将来になるにつれて近視眼的になるという将来バイアスと整合的な傾向にあることが明らかになった.また,この時間非整合性の一種である将来バイアスと整合的な選択は,健康状態の悪い後期高齢者にてより多く観察された.