- 著者
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安藤 杉尋
- 出版者
- 独立行政法人農業生物資源研究所
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2003
アブラナ科野菜根こぶ病抵抗性育種素材の開発のため、P-NIT2intをプロモーターに用い、根こぶ形成時にAtCKX1,AtCKX2,ARR22を発現させた形質転換体を作成した(シロイヌナズナ、ブロッコリー)。シロイヌナズナのP-NIT2int:AtCKX1,8系統、P-NIT2int:AtCKX2,5系統、P-NIT2int:ARR22,8系統、ブロッコリーのP-NIT2int:AtCKX1,8系統、P-NIT2int:ARR22,7系統に根こぶ病抵抗性試験を行ったところ、全ての系統で根こぶ形成が認められ、抵抗性は認められなかった。同様にCaMV35Sプロモーターを利用したシロイヌナズナ、P35S:AtCKX1,6系統、P35S:AtCKX2,3系統も根こぶ病抵抗性にならなかった。このことから、サイトカイニンの代謝、応答を制御することによる根こぶ病抵抗性の導入は困難と考えられた。また、同様に根こぶ形成時に発現誘導されるBrNIT2及びBrAO1をアンチセンスRNAにより抑制した形質転換ブロッコリーを作成した。P-NIT2int:BrNIT2anti,7系統、P35S:BrNIT2anti,2系統に根こぶ病菌接種を行った結果、NIT遺伝子の発現は非形質転換体に比べて低下したが、根こぶ病抵抗性にはならなかった。また、P-NIT2int:BrAO1anti,2系統についても根こぶ形成が認められた。シロイヌナズナではNIT遺伝子のアンチセンスRNAにより根こぶ形成が遅延することが報告されているが、(Neuhaus et al.,2000)シロイヌナズナでは根こぶでAO活性は上昇しなかった。従って、BrassicaにおいてはNIT,AO両者の関与により、一方のみの発現抑制では効果が低い可能性がある。BrAO1,BrNIT2両方を発現抑制した形質転換体の解析が必要と考えられた。