著者
安藤 洋介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

1.新規リチウムイオン応答性変色蛍光色素の設計および合成とセンサーデバイス化昨年度合成を完了した新規リチウムイオン応答性変色蛍光色素を、シランカップリング剤を介してガラス基板に固定化することで、リチウムイオンセンシングデバイスを作製し、評価を行った。このデバイスは、水溶液中において、リチウムイオン濃度変化に応じて2つの蛍光極大波長における強度レシオ応答を示し、レシオメトリック測定によって10^<-4>~10^<-1>mol/Lの濃度範囲で再現性の高いリチウムイオン濃度の定量を達成した。さらに、水溶液のpHや妨害イオン種の影響を受けないこと、連続測定可能な高い耐久性も確認された。また、ヒト血清中の既知リチウムイオン濃度の定量測定結果より、タンパクやその他の血清成分の影響を受けないことが確認され、実用応用可能な性能を有することが示された。これらの成果は、公刊学術論文(Analyst,次頁参照)に発表された。本研究により、医療計測ニーズに合う、実用応用可能な高耐久性・高感度・簡便なリチウムイオンセンサーのモデルが確立された。2.新規pH応答性蛍光量子ドットの創製高輝度・高安定イオン応答性変色蛍光ナノ粒子モデルとして、pH応答性量子ドット(無機ナノ粒子蛍光体)の創製に取り組んだ。このモデルは、直径数nmの量子ドット表面にpH応答性を有する有機蛍光色素を修飾する。実験結果より、シリカ薄層でコーティングされた量子ドット表面に色素が修飾されたことを蛍光スペクトル測定によって確認した。この修飾方法の検討結果と、昨年度行った量子ドットの基板への固定化の成果から、pH応答性量子ドットの作製および基板への固定化による、高耐久性・高感度pHセンシングデバイスの作製に向けた基礎的知見が得られた。