著者
安西 信雄 池淵 恵美
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.11-22, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

わが国の精神保健分野における社会生活技能訓練(SST)の本格的な導入は、1988年の米国UCLAのLiberman来日から始まった。その後約15年の発展経過をSSTの普及状況に関する6回のアンケート調査にもとづき検討した。その結果、(1)SSTは生活行動の改善を目標にデイケアを中心に開始され、(2)診療報酬化(1994年)以後は医療機関だけでなく非医療機関においても実施施設数の増加がみられ、(3)対象の拡大(統合失調症以外の気分障害や神経症圏、さらに司法など医療以外の対象へ)と技法の多様化(基本訓練モデルに加えて各種モジュールも実施)の傾向が認められた。普及の過程で生じた誤解や批判について検討し、普及におけるSST普及協会の役割を検討した。 SSTに関連した研究報告の経年推移を検討し、研究の動向を概括した。今後のわが国の地域ケアへの転換に関連して、生活の場での行動改善、長期在院患者の退院促進等にSSTが寄与すべきことを考察した。