著者
奥田 健次 井上 雅彦 山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-22, 1999-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では、文章中の登場人物の情緒状態の原因を推論する行動について高次条件性弁別の枠組みから分析を行った。そして、中度精神遅滞を持っ発達障害児2名を対象に、文章課題において登場人物が表出している情緒状態に対して、その原因について適切な感情表出語を用いて応答する行動を形成した。そのために、課題文に対して感情表出語カードを選択する条件性弁別訓練が行われ、さらに文中の感情を引き起こした出来事と感情表出語を組み合わせて応答するための条件性弁別訓練が行われた。その結果、課題文の登場人物の情緒状態にっいて、原因となる出来事と感情表出語を組み合わせて応答することが可能となり、未訓練の課題文に対しても適切な応答が可能となった。これらの結果から、発達障害児に対する文章理解の指導において条件性弁別訓練の有効性が示され、さらに文章理解を促進するために文中の文脈刺激への反応を強化することの重要性が示唆された。
著者
佐藤 秀樹 土屋 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-005, (Released:2022-04-18)
参考文献数
15

認知行動療法は目に見えない構成概念を測定する尺度の開発とともに発展してきた。患者報告式アウトカム尺度(Patient-Reported Outcome Measure: PROM)とは、患者の健康状態を患者自身の直接的な報告から情報を得て、修正や解釈を介さない尺度を指す。PROMの系統的レビューによってPROMの測定特性を理解することは、臨床や研究で測定したい概念に適したPROMを選ぶ場合などにも役立つ。本稿では、COSMIN(COnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments)の方法論に基づき、2018年に改訂された(a)PROMの系統的レビューのガイドライン、(b)コアアウトカムセットのガイドライン、(c)特に大きく変更された内容的妥当性のガイドラインについて解説する。
著者
宮崎 友里 重松 潤 大井 瞳 笹森 千佳歩 山田 美紗子 高階 光梨 国里 愛彦 井上 真里 竹林 由武 宋 龍平 中島 俊 堀越 勝 久我 弘典
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-017, (Released:2022-10-05)
参考文献数
36

インフォームド・コンセント(Informed Consent: IC)は、心理療法を提供する際にセラピストが道徳的な義務として行うことが必須とされている。一方で、心理療法のICでは多くの場合、心理療法を実施する期間や費用の設定に関する形式的なIC取得が多い。また、心理療法におけるICは、セラピストの治療関係の重要性をよりよく理解するのに役立つといった側面や、心理的な支援のプロセスにおいて大きなバイアスとなる可能性があるなど、心理療法に与える影響について指摘されているが、わが国でそれらを概観した研究はない。そこで本稿では、心理療法におけるICの現状や研究動向について述べたのち、IC取得が困難な場合の対応や国内施設における心理療法のIC取得に関する現状を報告し、心理療法のICの理解を深めることを目的とする。
著者
三田村 仰 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.257-270, 2009-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

発達障害児の保護者は子どもが通う学校の教師に対し、しばしば子どものニーズに応じた支援について依頼・相談を行う。より円滑で効果的な教師とのコミュニケーションを目指し、5名の発達障害児の保護者を対象に機能的アサーション・トレーニング(以下、トレーニング)を行った。トレーニングは、間接表現をも丁寧な自己表現として教える機能的アサーションの枠組みに基づいていた。保護者から得たアセスメント結果をもとに、トレーニングでは、保護者から教師への機能的なコミュニケーションを目標として、参加者に丁寧な表現と具体的な表現のスキルをトレーニングした。トレーニング効果は、担任教師との面談場面をイメージしての面談ロールプレイ・アセスメントをもとにABデザインで評価された。その結果、5名の参加者いずれも介入期においてべ一スライン期よりも丁寧で具体的な依頼・相談を行っており、介入期の依頼・相談がべ一スライン期の依頼・相談よりも望ましいと現役教師によって評定された。
著者
竹林 由武
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-024, (Released:2022-05-31)
参考文献数
24

シングルケース実験デザイン(single-case experimental design: SCED)は、個人や集団に実施した介入の有効性評価に用いられる研究デザインの一つである。本稿では、SCEDの代表的な有効性評価法である視覚分析の概要と信頼性に関する問題を述べたうえで、視覚分析を補助する代表的な方法を解説する。具体的には、視覚補助を用いて構造化された視覚分析手法と統計指標を用いた方法について述べる。個人内効果の統計指標は、重複率に基づくTau系指標、フェーズ間の平均値差や対数反応比、回帰モデルに基づく方法を紹介する。個人間効果の統計指標として、階層線形モデルに基づく個人間標準平均値差や個人内効果指標のメタ分析的な統合手法を紹介する。最後に多様な統計指標から適切なものを選択するための指針を議論し、視覚分析と統計指標を簡便に算出できるソフトウェアやウェブアプリを紹介する。
著者
国里 愛彦 土屋 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-004, (Released:2022-04-18)
参考文献数
29

心理学の再現性の問題が指摘されるようになって久しいが、心理学および認知行動療法の研究において再現可能性を高めるための取り組みはまだ十分に進んでいない現状がある。本稿では、現状把握として、認知行動療法に関連する心理学における再現性の危機について概観したうえで、再現性の危機を乗り越えるための方策について論じた。具体的には、Goodman et al.(2016)が提唱する3つの再現可能性(方法の再現可能性、結果の再現可能性、推論の再現可能性)に基づいて、それぞれの現状における問題点の指摘と問題を乗り越えるための前向きな解決法について解説した。3つの再現可能性は主に個々の研究者の研究実践を扱っているが、より広く社会の中で研究実践を位置づけ、研究の価値を高めることも必要となってきている。そこで、研究疑問の優先順位付けにより研究の価値を高めることについても論じた。
著者
嶋 大樹 井上 和哉 本田 暉 高橋 まどか
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.22-014, (Released:2023-04-18)
参考文献数
33

本研究では、外来臨床での標的行動選定プロセスの整理および標的行動の位置づけにおける特徴の記述を目的とし、うつ病もしくはうつ状態にある者への行動的支援に関する文献をレビューした。国内外の複数のデータベースにて関連論文を検索し、11件の研究を採択した。そのうち10件で複数の標的行動に関する記述が認められ、7件で標的行動の継続測定に関する記述が認められた。各文献における選定プロセスは、その要素から1)プログラムに基づくもの、2)希望に基づくもの、3)価値に基づくもの、4)日常生活アセスメントに基づくものとして大別可能であった。また、標的行動の主たる位置づけは、1)当該標的行動の増加自体が目的となっているもの、2)なんらかの目的達成の手段であるものに分類可能であった。しかし、標的行動選定に至る臨床判断プロセスについての記述が全般に少ないため、事例報告における当該情報の充実化が提案された。
著者
大井 瞳 中島 俊 宮崎 友里 井上 真里 堀越 勝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-027, (Released:2021-06-17)
参考文献数
35

国連サミットで掲げられた持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の保健分野においてはあらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進することが目標に掲げられている。SDGsで重視されている「誰一人取り残さない」という点においては、遠隔での認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy: CBT)が有効な手段となりうる。遠隔CBTは、感染症の拡大、セラピストの不足といった理由で対面のCBTを受けることが困難な場合にもCBTの提供が可能となる手段である。一方で、遠隔CBTが主流となることによって、心理療法提供の適用から外れてしまう人、すなわち、取り残される人が生じるおそれがある。本稿では、遠隔CBTの適用が難しいケースとその支援について、(1)デジタルデバイド、(2)クライエントの病態や障害、(3)緊急対応、の3点から述べた。遠隔CBTの役割と限界を認識したうえで、「誰一人取り残さない」よう心理的援助を提供することの重要性が示唆された。
著者
土屋 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.107-116, 2015-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
12

質問票による測定指標についての尺度研究は、医療や心理学の分野をはじめ、認知・行動療法の研究においても広く行われてきた。しかし類似概念尺度の乱立や、尺度は開発されたものの科学的に明らかにすべき尺度特性が十分に検討されていないなどの問題がある。こうした現状を変えるため健康における測定の分野を中心にCOSMIN(COnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments)チェックリストがさまざまな領域の研究者らの合意に基づき作成された。本稿では、COSMINチェックリストの概要を紹介するとともに、これに準拠し尺度研究において失敗しない研究計画を立てるため、特に重要な四つの留意事項((1)例数設計、(2)再検査信頼性・測定誤差の評価、(3)仮説の設定、(4)反応性・解釈可能性の評価)の解説と、その具体的な記載事例を紹介することを目的とする。
著者
佐藤 秀樹 土屋 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.123-134, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2

認知行動療法は目に見えない構成概念を測定する尺度の開発とともに発展してきた。患者報告式アウトカム尺度(Patient-Reported Outcome Measure: PROM)とは、患者の健康状態を患者自身の直接的な報告から情報を得て、修正や解釈を介さない尺度を指す。PROMの系統的レビューによってPROMの測定特性を理解することは、臨床や研究で測定したい概念に適したPROMを選ぶ場合などにも役立つ。本稿では、COSMIN(COnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments)の方法論に基づき、2018年に改訂された(a)PROMの系統的レビューのガイドライン、(b)コアアウトカムセットのガイドライン、(c)特に大きく変更された内容的妥当性のガイドラインについて解説する。
著者
樫原 潤 伊藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-015, (Released:2021-08-03)
参考文献数
19

心理ネットワークアプローチは、心理的な構成概念(例えば、各種の精神疾患)を「観測変数(例えば、個別症状)同士の複雑な相互作用(ネットワーク)」として理解し、それらのネットワークを実データから推定するものである。本稿では、「臨床革命」という造語を用いつつ、本アプローチが臨床実践の効率化と精緻化という多大なインパクトをもたらしうることを、以下のように順を追って議論する。第1に、本アプローチ特有の用語を紹介し、心理ネットワーク分析が横断的・縦断的どちらのデータにも適用できることを示す。第2に、症状ネットワークの研究知見を参照すれば、より効率的にケースフォーミュレーションを実施できると議論する。第3に、本アプローチを用いれば、心理療法や個別の介入技法の精緻な作用機序を解明できると議論する。最後に、本アプローチを活用する際の留意点と今後の課題について議論する。
著者
高階 光梨 鈴木 ひかり 白塚 龍太郎 大橋 佳奈 宮下 太陽 横光 健吾
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-10, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
16

近年、多くのスマートフォン用アプリケーション・プログラムが抑うつ症状を呈する者や抑うつの予防のために開発され、日常生活場面での情報提供、支援、介入の機会を提供している。本研究は、うつ病に対する心理学的支援を目的としたアプリに関する日本の現状を明らかにすることであった。アプリケーションストアでダウンロード可能なうつ病や抑うつ症状を対象としたアプリは47個であった。ダウンロード可能なアプリについてApp Evaluation Model、アプリの主たる目的、テクノロジーコンポーネント、および治療を目的としたアプリに含まれる認知行動療法の要素について評価を行った結果、概してエビデンスに基づいており、安全で、使用者が期待するサービスを提供しているアプリはほとんど開発されていないことが示唆された。本研究はわが国において利用できるうつ病を対象としたアプリの最初のレビューであり、その枠組み作りに役立つであろう。
著者
首藤 祐介 亀井 宗 唐渡 雅行
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.53-65, 2018-01-31 (Released:2018-06-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

行動活性化療法(BA)とアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は臨床行動分析に関する心理療法であり、共通点が多いが、相違点もある。本症例では夫婦関係の悩みからうつ病を発症した30代女性に対して、BAの単純活性化を実施し、その後ACTを実施した。その結果、Beck Depression Scaleが32点から7点に減少し、Acceptance and Action Questionnaire-IIも46点から26点に減少し、抑うつ症状の改善と心理的柔軟性の向上が認められた。また、ACTの導入によって気分や体調に影響を受けず価値に沿った活動が行えるようになった。この結果は10カ月のフォローアップも維持されていた。本症例から、BAとACTの特徴について考察し両者の効果的な使用について検討した。
著者
杣取 恵太 二瓶 正登 北條 大樹
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-028, (Released:2021-09-10)
参考文献数
21

近年、認知行動療法における多くの研究でベイジアンアプローチが用いられるようになった。このことは臨床研究者や実践家において研究や介入の質を向上するためにそれらの方法を理解する必要があることを示している。そのため、本論文では初学者のベイジアンアプローチに対する理解を促進することを目的とした。はじめにベイジアンアプローチの導入と従来の方法との比較を行い、その後介入効果を調べるためにベイジアンアプローチを使用した実際の研究例の紹介と解説を行った。最後に認知行動療法の研究にとってベイジアンアプローチがどのような示唆をもたらすかを議論した。
著者
横山 仁史 髙垣 耕企 神原 広平 神人 蘭 岡本 泰昌
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.295-306, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
20

心理療法のエビデンスは介入前後の標的指標の差に基づくものが多く、その治療効果がどのように実施された結果得られたのかについて定量的な情報は乏しい。心理療法は言語を主手段とするが、近年、言語情報に対してデータ駆動型の計算アプローチによって客観的かつ再現可能なモデルを生成するトピックモデルが注目されている。本研究では、構造化された1事例の行動活性化中の会話データから、時系列構造を有する動的トピックモデルが治療セッション内容を抽出可能かについて検討を行った。結果として、会話に関する潜在的な四つのトピックが抽出され、それらの量的変動過程が治療プログラムを反映していることが示された。本研究は動的トピックモデルを心理療法中の会話に対して用いた最初の研究であり、これによる実際の治療プロセスの定量化と作用エビデンスの蓄積が期待できる。
著者
井森 萌子 常川 祐史 片岡 沙耶 伊藤 雅隆 大屋 藍子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.23-32, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
14

本研究は、先延ばし傾向のある大学生を対象に、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が先延ばしに与える影響について、先延ばしの心理指標と行動指標の両側面から検討することを目的とした。対象者47名を60分のACTのプログラムを行う実験群、プログラムは行わない統制群に振り分けた後、先延ばしの行動指標として、7日間の課題達成率、先延ばしの心理指標として先延ばしを測定する質問紙への回答をプログラムの前後に求めた。同時に、ACTのプロセス指標であるFFMQとAAQ-IIも測定した。四つの指標の変化を分析した結果、実験群では課題達成率、先延ばし尺度がともに改善されたが、ACTのプロセス指標は変わらなかった。ACTに基づくプログラムが心理面、行動面ともに先延ばしの改善に効果的である一方、効果のメカニズムについては検討していく必要があることが示唆された。
著者
国里 愛彦 片平 健太郎 沖村 宰 山下 祐一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-036, (Released:2021-08-05)
参考文献数
28

本論文では、計算論的アプローチについて紹介する。計算論的アプローチとは、刺激と反応との間にある脳の情報処理過程を明示的に数理モデルにする研究手法である。この計算論的アプローチを精神医学研究で用いると計算論的精神医学となる。認知行動療法のモデルでは、刺激と反応との間の過程を言語的にモデル化しているが、計算論的アプローチを用いることで、モデルの洗練化、シミュレーションを通した新たな現象・介入の予測なども可能になることが期待される。まず、本論文では、計算論的アプローチについて説明し、その代表的な4つの生成モデルについて解説する。さらに、計算論的アプローチを用いた認知行動療法研究として、うつ病と強迫症に対して強化学習モデルを用いた研究について紹介する。また、計算論的アプローチを研究で用いる際の推奨実践法について、4つのステップに分けて解説する。最後に、今後の計算論的アプローチの課題について議論する。
著者
大対 香奈子 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.43-55, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
7

本研究の目的は、小学3年生の学級を対象に感情理解・感情統制の訓練を含めた学級単位の社会的スキル訓練(SocialSkillsTraining;SST)を実施し、その結果、標的スキル、仲間からの受容度、および主観的な学校適応感に向上がみられたかを検討することであった。対象は3年生の2学級であり、学級Aを介入群(η=37)、学級Bを対照群@=35)とした。学級Bの児童は通常の授業を受けた。学級Aの担任教師から報告された仲間関係の問題を行動分析した結果、「感情理解スキル(感情読み取り・感情統制)」「頼むスキル」「断るスキル」を標的スキルとした。SSTの結果、介入群では標的スキルの獲得が確認され、学級全体の仲間関係にも改善がみられた。また、特に介入前に学校適応感が低かった児童について、対照群では学校適応感に有意な変化がみられなかったのに対し、介入群では介入から3か月後のフォローアップにかけて学校適応感に向上がみられた。