著者
奥野 元子 安達 一明
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.244-250, 1992-06-05 (Released:2008-02-14)
被引用文献数
3 4

本研究では, 吸水経過に差異をもたらす精米の形質を明確にするため, 水温と精米の吸水経過の関係, 立地条件の異なる2地区において栽培された水稲5品種, チドリ, コシヒカリ, ニホンマサリ, 日本晴および近畿33号の精米の性状, すなわち, 搗精歩合, 水分含量, 生粒重, 乾粒重, 体積, 比重および硬度と, 水に浸漬した場合の吸水経過との関係を最大吸水速度と最大吸水量を指標として調査した. その結果, 1)水温20℃以下では, 精米の吸水は水温の影響を大きく受け, 低温ほど最大吸水速度が小さく, また最大吸水量が若干多いことが明確になった. 2)搗精歩合を一定にした場合の精米性状の品種間の変動は, 栽培地が異なっても硬度で最も大であった. 3)精米の最大吸水速度および最大吸水量は精米の硬度と最も相関が強く, 硬度が大きいほど, 最大吸水速度が高く, 最大吸水量も多いことが明らかになった. 4)搗精歩合を異にした米粒間では, 搗精歩合が低いほど, 切断荷重, 最大吸水速度および最大吸水量が大きいことが明確になるとともに, 吸水経過と硬度の関係が搗精歩合によって異なることが明らかになった. 5)搗精歩合が異なった場合の吸水経過と硬度の関係の品種間比較から, 日本晴とコシヒカリの米粒の内部構造の質的差異が窺われた. これらの結果から, 精米を水に浸漬した場合の吸水経過の差異には, 搗精歩合および硬度の違いが密接に関連し, 吸水経過の差異は精米の形質の差異に基づく吸水特性の差異であるといえた.