著者
安部 伸太郎 原賀 勇壮 比嘉 和夫 楠本 剛 重松 研二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.506-510, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
6

【目的】使い捨て注射器は,プランジャー(押し子)と注射器内側が接する部位があり,注射器内側が汚染する可能性がある.プランジャーの往復回数と使い捨て注射器内側の汚染の程度を検討した.【方法】菌液塗布群5本,対照群5本の計10本の20 ml使い捨て注射器で実験を行った.滅菌した液体培地を最大目盛の25 ml吸引し,プランジャーの突出部に菌液を塗布し,液体培地をすべて排出するという操作を,注射器1本につき10回繰り返した.対照群では,菌液ではなく滅菌した液体培地を塗布して同様の操作を行った.排液25 mlのうち0.1 mlを培養し,菌数を計測した.【結果】菌液塗布群では,1回目の排液に菌が含まれていた使い捨て注射器は1本,2回目では0本,3回目では3本,4回目では4本,5回目以降では5本すべての使い捨て注射器の排液から菌が検出された.使用回数の増加とともに排液中の菌数が増加した.対照群では,1本の使い捨て注射器で9回目の排液から菌が1個検出され,それ以外の検体からは菌は検出されなかった.【結論】使い捨て注射器のプランジャーが汚染された状態で往復運動を繰り返すと,注射器の内側が汚染され,使用回数が増えると汚染の程度は増加する.
著者
安部 伸太郎 廣田 一紀 平田 和彦 竹本 光一郎 井上 亨 比嘉 和夫
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.52-55, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
11

硬膜外自家血注入を3カ所に行うことで,外傷性低髄液圧症候群が治癒した症例を報告する.患者は44歳の男性で,入院の3週間前に後頸部から背部にかけて強くマッサージをされ,その翌日から起立性頭痛が生じた.頭部と頸部MRI,MRミエログラフィー,RI脳槽·脊髄液腔シンチグラフィー,髄液圧測定により,硬膜下血腫を伴う外傷性低髄液圧症候群と診断したが,髄液の明確な漏出個所は特定できなかった.入院での安静臥床と輸液による保存的治療を開始したが,入院7日目に頭痛は増悪し,硬膜下血腫は増大した.入院11日目に瞳孔不同をきたしたため穿頭血腫除去術を行い,同日に第7頸椎/第1胸椎間の硬膜外腔に自家血13 mlを注入した.しかし,頭痛は消失しなかった.入院15日目の腰部MRI,17日目の胸部MRIで,胸椎下部から腰椎上部にかけての硬膜外腔に髄液が漏出していたが,明確な漏出個所は不明であった.入院19日目に第3/4腰椎間の硬膜外腔に自家血16 mlを注入したが,頭痛は消失しなかった.入院22日目に第9/10胸椎間の硬膜外腔に自家血12 mlを注入し,2時間後に頭痛は消失した.頭痛が消失して1カ月後には,硬膜下血腫と瞳孔不同は消失した.