著者
安部 博志
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.117-123, 1997-03-31
被引用文献数
1

本研究は、小学校心身障害学級に在籍する2名の自閉症児に対して、路線バスを利用して一人通学するための訓練プログラムについて検討した。訓練プログラムの計画と実施にあたっては、応用行動分析の手法を用いた。対象児Aは、訓練開始から9ヵ月後に、またBは2年後に、それぞれ単独での登下校が可能となった。しかし、現実場面の訓練の進行に伴って、予期せぬ様々な問題行動が出現したために特別な訓練を実施する必要があった。さらに、安全な登下校を可能にするためには、対象児への訓練ばかりでなく、横断歩道への足型の設置など、社会環境への介入を実施する必要があった。2年半に及ぶ訓練の結果から、シミュレーション場面と現実場面とを組み合わせて訓練することが、移動スキルの形成と般化にとって有効なことが示された。対象児の変容に合わせて、訓練プログラムを柔軟に修正することの重要性が示唆された。