著者
清水 如代 門根 秀樹 久保田 茂希 安部 哲哉 羽田 康司 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.249-252, 2019-04-25

は じ め に 脊髄損傷に伴う完全下肢麻痺患者における歩行再建のために,歩行支援ロボットが臨床応用されている.トレッドミル据えつけ型ロボットのLokomat(Hocoma社)や,外骨格型装着ロボットであるReWalk(ReWalk Robotics社)などが知られている.これらはあらかじめ決められたプログラムに基づく歩行で筋活動電位の取得できない完全麻痺患者でも使用できる反面,受動的な歩行となり麻痺患者の運動意図を反映しにくいものとなる. ロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL,Cyberdyne社)1)は,装着者の神経筋活動を感知することのできる生体電位センサをもつ外骨格型装着ロボットである.重度麻痺症例で筋活動が微弱であっても,生体電位センサにより感知できる点が,他のロボットにない最大の特徴である.われわれは,随意的筋活動が得られない症例であっても「四肢を動かしたい」という運動意図により随意的に麻痺肢を動かすために,本来の主動筋ではない残存筋にセンサを貼り,トリガーとして選択する方法を開発した.この方法をheterotopic Triggered(異所性のトリガーを用いた)HAL(T-HAL法)2~4)と名づけ,完全麻痺者を対象に麻痺肢の随意運動訓練を行っている.本稿では,T-HAL法について概説をする.