著者
柘植 弘光 原 友紀 道信 龍平 池田 和大 十時 靖和 井汲 彰 小川 健 西浦 康正 吉井 雄一 山崎 正志
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.105-107, 2021 (Released:2021-11-26)
参考文献数
6

目的:大学硬式野球部員59名にメディカルチェックを実施し,肘スポーツ障害の特徴について検討した.方法:問診票で現在の症状の有無や既往歴を確認し,検診では上下肢体幹の可動域,筋力に加え,肩肘について圧痛,moving valgus test,尺骨神経の診察などを行った.55例に肘のMRIを実施し,UCL損傷を調査した.MRIでUCL損傷ありと判断された選手の肘内側障害や肩障害にについて解析した.結果:肘のMRIで70.1%にUCL損傷を認め,そのうち69.2%は無症状であった.肘内側症状のあるUCL損傷群は,それ以外の選手群と比較して肩外旋可動域の制限や肩甲下筋筋力の低下がある傾向があり,肩のインピンジメント徴候が多い傾向があった.考察:大学野球選手には無症候性UCL損傷所見が多くみられた.また有症状のUCL損傷群は肩の不調を併発する傾向がみられた.
著者
中川 将吾 六崎 裕高 鎌田 浩史 俣木 優輝 遠藤 悠介 松田 真由美 高橋 一史 岩崎 信明 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.245-248, 2019-04-25

は じ め に 外骨格型の動作支援ロボットであるロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL;Cyberdyne社)を使用した機能回復訓練が脳卒中,脊髄損傷,変形性関節症といったさまざまな運動機能障害患者に対して導入され,その良好な結果が報告されている1~3).HALは関節運動の補助を行うとともに,補助された運動の変化を感覚系が中枢神経にフィードバックし,HAL取りはずし後にもその効果が継続するのではないかと考えられており,interactive bio-feedback仮説と呼ばれ,麻痺症状を呈するさまざまな疾患に対しての効果が期待できる4). HALは,脳性麻痺患者に対しても自立歩行を可能にすると報告されている5).脳性麻痺はさまざまな病型があるが,痙縮型に代表されるように,筋出力のインバランスを伴っている.重症度の分類であるgross motor function classification system(GMFCS)(表1)6)のレベルⅠからⅤに進むに従って重症化し,筋出力のインバランスも強くなってくる.GMFCSレベルⅢやレベルⅣの症例は,歩行訓練を行い,筋出力のインバランスを調整することで歩行能力を維持し,変形を予防し,介助量を減少させることが可能である. われわれのグループでは,運動機能障害を有する脳性麻痺患者に,HALを使用した歩行訓練を外来レベルで単回,また入院して集中的に行っている.本稿では脳性麻痺患者に対してのHALを使用した歩行トレーニング方法と,使用後の効果について報告した.
著者
奥脇 駿 小谷 俊明 中山 敬太 佐久間 毅 飯島 靖 赤澤 努 南 昌平 大鳥 精司 山崎 正志
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.1171-1176, 2022-11-20 (Released:2022-11-20)
参考文献数
10

はじめに:思春期特発性側弯症(AIS)に関して,早期発見・治療を目的とした学校検診が重要である.しかし本邦では自治体毎に検診法は異なる.今回,紹介元の違いで術前患者を評価し学校検診の有効性を比較検討した.対象と方法:当院で手術を受けたAIS患者で,運動器検診に加えて客観的検査法を併用している地域からの紹介(X群),運動器検診のみの地域からの紹介(Y群)とした.患者背景を比較し,受診する契機が学校検診によるものか否かを調査した.結果:X群は117名,Y群は40名であった.X群で初診時の年齢が低く(p=0.012),受診契機が学校検診の割合が高く(p<0.001),初診時主カーブCobb角が小さかった(p<0.001).Y群で手術時の年齢は低く(p=0.011),術前の主カーブCobb角は大きかった(p<0.001).結語:運動器検診のみを行なっている地域からの紹介患者は,初診時の年齢が高く,初診時・術前の主カーブCobb角も大きかった.また,運動器検診のみの地域からの受診患者では,学校検診契機で受診する割合が低かった.客観的検査法を併用している地域の方が早期受診に寄与している可能性がある.
著者
藤由 崇之 北村 充広 小田切 琢磨 蓮江 文男 神谷 光史郎 牧 聡 古矢 丈雄 大鳥 精司 国府田 正雄 山崎 正志 小西 宏昭
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.10, pp.1163-1168, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
9

K-line(+/-/+)型OPLL症例に対し,椎弓形成術(LMP)に局所固定を最大圧迫高位レベルに追加する術式(sPDF)は有用であるかどうか調査するためにLMP群とsPDF群の術後成績を傾向スコアマッチング法にて比較検討した.全29症例中,それぞれ7例ずつマッチングした.JOA改善率と獲得点数はsPDF群で有意に高く,術後成績は改善していた.K-line(+/-/+)症例に対し,椎弓形成術に局所固定を最大圧迫高位レベルに追加する方法は有用な術式であると思われる.
著者
山崎 正志
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1085-1092, 2019-12-25

はじめに 腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ(ヘルニコア®)を用いた椎間板内注入療法(以下,コンドリアーゼ療法)が本邦で認可され,新しい椎間板内酵素注入療法として,その普及が期待されている.コンドリアーゼ療法を紹介する際に,しばしば話題に上るのが,1980年代に北米を中心として世界的に盛んに施行されていたキモパパイン椎間板内注入療法(以下,キモパパイン療法)である3).キモパパイン療法に対する評価のほとんどは,「アナフィラキシーショック,横断性脊髄炎や重度の腰痛などの重篤な副作用の発現により,施行されなくなった」という内容のものである.しかしながら,これらの評価は,適切な科学的解析のもとに下された結論といえるのであろうか? 筆者が渉猟し得た限りでは,キモパパイン療法を科学的に完全に否定している資料は見当たらない. キモパパイン療法が北米で全盛を迎えていた1980年代の初めに,これを本邦に導入することにひときわ情熱を傾けていたのが,当時千葉大学整形外科教授の井上駿一先生であった.井上先生の強力なリーダーシップのもと,千葉大学を中心にキモパパイン療法の基礎的臨床的研究が本邦においても盛んに行われた5,6,11,12).筆者も当時,大学院生として,その研究に加わっていた15〜17).1987年に井上駿一先生が研究半ばで急逝されたため,本邦におけるキモパパイン研究は,ややその勢いを失いかけた感はあった.しかしながら,その後も研究は継続され,Phase Ⅲ臨床試験までが行われた1).その結果は,十分に満足すべきものであり,重篤な合併症はなかったと記憶している.しかしながら,本邦でのキモパパイン療法の臨床使用が認可されることはなく,その後,コンドリアーゼ療法が登場するまでの約30年間は,キモパパイン療法が話題に上がることはほとんどなくなった. 今回,本邦におけるキモパパイン療法の基礎的臨床的研究を史的に考察した.確かに,キモパパイン療法そのものは歴史的な存在であろう.しかし,今後の発展が期待されるコンドリアーゼ療法の臨床的な効果を議論するうえで,キモパパイン療法との比較は,有益な情報をもたらすと考える.その意味で,本稿では,キモパパインとコンドリアーゼとの比較を加味して執筆を行った.
著者
道信 龍平 小川 健 原 友紀 吉井 雄一 十時 靖和 柘植 弘光 山崎 正志
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.102-104, 2021 (Released:2021-11-26)
参考文献数
9

目的:大学野球選手における投球側上腕骨内側上顆下端の異常所見と学齢期練習量との関係を調査すること.対象と方法:大学硬式野球部に所属する選手59名を対象とし,全選手に超音波検査を行い,投球側上腕骨内側上顆下端に不整または裂離を認めるものを異常所見あり(A群),認めないものを異常所見なし(N群)とした.アンケート調査より小学生,中学生,高校生での週平均練習時間と週平均投球数,競技開始年齢および初発肘痛時期を取得し,両群を比較検討した.結果:A群40名,N群19名だった.中学生での週平均練習時間がA群で有意に長かった.A群の中にも肘痛歴のない選手が15名(37.5%)いた.考察:大学野球選手における内側上顆下端の異常所見は主に骨端線閉鎖前の骨端症を反映していると考えられ,中学生での練習量の急激な増加が影響した可能性が示唆された.また,無症候性に異常所見をきたす選手が少なくないと推測された.
著者
浅井 玲央 辰村 正紀 小川 健 万本 健生 平野 篤 山崎 正志
出版者
一般社団法人 日本整形外科スポーツ医学会
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (ISSN:13408577)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.55-60, 2021 (Released:2021-04-03)
参考文献数
19

腰椎分離症症例の男女における相違点を見出すことを目的とし,当院で腰椎分離症と診断された高校生以下の症例60例104ヵ所について解析した.性別の内訳は男性44例,女性16例で,罹患高位は男性でL5分離が多く(p=0.060),治療自己中断率は男性で高かった(p=0.095).保存療法が完遂できない男性症例を減らすための対策を検討する必要がある.平均受診年齢や骨年齢,SBO保有率,第5腰椎前弯角,初診時罹患部の末期例割合,骨癒合率,治療期間などは男女で相違がなかった.今後,調査項目を追加し前向き研究を行なうなどして,より詳細に男女の相違点やその原因を明らかにしていく必要がある.
著者
辰村 正紀 奥脇 駿 蒲田 久典 平野 篤 山崎 正志
出版者
一般社団法人 日本整形外科スポーツ医学会
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (ISSN:13408577)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.61-65, 2021 (Released:2021-04-03)
参考文献数
11

はじめに:腰椎分離症の多くが下位腰椎に発生するため,上位腰椎に関するまとまった報告はない.L1からL3が罹患高位となった腰椎分離症の患者背景の解析を目的とし本報告を行なった.方法:対象をL1からL3に腰椎分離症を有する高校生以下の患者42例67分離とした.男女比,平均年齢,病期,潜在性二分脊椎(SBO),癒合率を調査した.結果:男性30例,女性12例で,平均年齢は15.5歳であった.初診時の偽関節は26%で,進行期病変が6%,2期病変が7%.同一高位にSBOは存在しなかった.癒合率は86%であった.考察:上位腰椎の分離症は保存治療で高い癒合率を示した.進行した病変が少なく,同一高位にSBOが存在しないことが影響していると考える.
著者
六崎 裕高 吉川 憲一 佐野 歩 古関 一則 深谷 隆史 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.241-244, 2019-04-25

は じ め に ロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL;Cyberdyne社)は,着用可能なロボットで,装着者の皮膚表面に貼付された電極から生体電位信号を解析し,パワーユニットを制御して,装着者の動作を支援することができる1).これまで,脳卒中,脊髄疾患,小児疾患などで安全性や効果が報告されてきた2~4).人工膝関節全置換術(TKA)後においても,関節可動域(ROM)の改善のために単関節型HALが用いられ,また,歩行能力の改善のために両脚型HALが用いられ,安全性や効果が報告されてきた5,6).われわれは,歩行能力,ROM,筋力の改善を念頭におき,両脚型HALより軽量で,単関節型HAL同様にROM訓練可能な単脚型HALを用いてTKA後にトレーニングを行い,リハビリテーションとしての可能性を考察した7).これをもとにTKA術後急性期における単脚型HALを用いた臨床研究について報告する.
著者
清水 如代 門根 秀樹 久保田 茂希 安部 哲哉 羽田 康司 山崎 正志
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.75, pp.249-252, 2019-04-25

は じ め に 脊髄損傷に伴う完全下肢麻痺患者における歩行再建のために,歩行支援ロボットが臨床応用されている.トレッドミル据えつけ型ロボットのLokomat(Hocoma社)や,外骨格型装着ロボットであるReWalk(ReWalk Robotics社)などが知られている.これらはあらかじめ決められたプログラムに基づく歩行で筋活動電位の取得できない完全麻痺患者でも使用できる反面,受動的な歩行となり麻痺患者の運動意図を反映しにくいものとなる. ロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL,Cyberdyne社)1)は,装着者の神経筋活動を感知することのできる生体電位センサをもつ外骨格型装着ロボットである.重度麻痺症例で筋活動が微弱であっても,生体電位センサにより感知できる点が,他のロボットにない最大の特徴である.われわれは,随意的筋活動が得られない症例であっても「四肢を動かしたい」という運動意図により随意的に麻痺肢を動かすために,本来の主動筋ではない残存筋にセンサを貼り,トリガーとして選択する方法を開発した.この方法をheterotopic Triggered(異所性のトリガーを用いた)HAL(T-HAL法)2~4)と名づけ,完全麻痺者を対象に麻痺肢の随意運動訓練を行っている.本稿では,T-HAL法について概説をする.