著者
安部 章蔵
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.693-700, 1986-10-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1

練り餡は伝統的手法で製造されており,この製造条件が品質に与える影響や,練り餡の品質評価法が確立されていない.そこで,国産小豆から生餡を作り,再現性を高めるためアミログラフを使用して一定温度,一定かくはんして餡練り時間を変えた3試料を調製して理化学的特性と官能特性との関係を検討した.(1) 餡練り時間と共にアミログラフによる粘度曲線はほぼ直線的に増加し,テクスチュロメーターで測定した硬さ,粘着性,遠心分離による保水力,餡の見掛けの体積は増加し,赤外線による乾燥速度,水分活性は低下した.その際,餡練り中に餡粒が膨化崩壊して遊離でんぷん含量も増加した.(2) 試作した練り餡を貯蔵した場合,遊離でんぷん含量が多いほど物性の変化量が大きく,練り餡の品質劣化には遊離でんぷんが関与すると推定した.そして,これを確認するため,でんぷんを添加してその挙動を調べたところ,餡練り過剰試料とよく似た挙動を示し,遊離でんぷんは練り餡の物性に大きく関与することが認められた.(3) 理化学的測定値から官能が推定できると極めて都合が良い.硬さ,赤外線による乾燥速度,遠心分離による保水力を測定することによりそれぞれ82%以上の寄与率で官能評価値が推定できた.しかし,練り餡には種類が多いので,目的に応じた検討が必要であると考える.