- 著者
-
安高 啓朗
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.1, pp.1_57-1_79, 2017 (Released:2020-07-01)
- 参考文献数
- 51
世界金融危機後も依然として強い影響力を保ち続けているネオリベラリズム (新自由主義) の持続性は, 近年の研究における一つの焦点となっている。本稿は, ネオリベラリズムがどのように危機後も生き延びたか, またオルタナティヴな構想が真剣な議論の対象とならないのかについて, 行為遂行的効果という観点から考察する。経済社会学における行為遂行性論と, 「経済による政治の脱魔術化」 としてのネオリベラリズムというW・デービスの定義にもとづいて, 本稿では経済的な尺度が自律した政治的思考を抑圧する形で成立するネオリベラリズムが, 観念の次元で政策を規定するだけでなく, 市場の諸装置にまで及んでいることで半ば自然化されていることを論じる。そこでは, 経済学自体が統治メカニズムの一部となることによって, 経済合理性や道具的理性に合致しないものは規範理論として退けられる。行為遂行性をめぐる政治は, ネオリベラリズムの下では常に非対称的な関係の中でしか行われないのである。