著者
廣森 直子 宋 美蘭 上山 浩次郎 上原 慎一
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.140, pp.337-351, 2022-06-25

本稿の目的は青森県の高校卒業生の進路を地域間格差,ジェンダー差に着目して明らかにすることである。その結果,青森県の高校生の進路状況を全国と比較すると,大学・短大への進学率の低さと就職率の高さが特徴的であることや,専門学校進学率は一貫して全国より低いことが明らかにされた。 青森県の地域区分は6つに分かれており,主要3市(青森,弘前,八戸)を含む3地域(東青・中南・三八)と,郡部の3地域(西北・上北・下北)である。また,青森県内の大学は11校,短大は5校,専門学校は26校あるが,青森県内の高等教育機会は主要3市を含む3地域(東青・中南・三八)に偏在しており,地域間格差が見られる。 高校卒業生の進路状況では,全体として男性ほど就職率が高く,女性ほど進学率が高い。青森県内のいずれの地域も同様の傾向が見られた。地域区分別にみると,東青・中南・三八は進学率が高く就職率が低く,西北・上北・下北は進学率が低く就職率が高い。進学率が高い地域と低い地域(就職率が低い地域と高い地域)があり,「二極分化」の傾向が見られた。こうした傾向は高等教育機会の供給の地域分布に影響を受けつつ,高校偏差値の地域的な格差によって生じている。第4章にあるように,この傾向は北海道とは異なる現象として現れている。
著者
宋 美蘭
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.77-99, 2011-12-27

【要旨】今日の韓国における学力問題の一つは,教師による,生徒への教育的働きかけが画一的になりやすく,生徒一人ひとりの可能性を引き出すための工夫が必ずしも十分ではない,という結果と,もう一方では,学校組織において主に教師によって行われる教育実践と,親などが意識的・無意識的に行う子どもへの働きかけとが相殺し合って,「負の効果」をもたらしていることにある,と考えられる。 本研究の結果から,一般校,とりわけC校やF校で水準別教育が生徒の学力向上に一定の効果をあげていることは,必ずしも「水準別教育」によるものではなく,その学校・生徒の実情にあう授業改革・工夫,とくに「共同体型授業」によることが明らかになった。平準化政策がもたらした学校内学力格差の縮小には,生徒一人ひとりの諸状況・実態を踏まえた,共同体型授業の推進が有効であり,それが韓国の教育・学力問題の一つを解決する,ひとつの手がかりになると考えられる。