著者
宍戸 邦章/佐々木 尚之 佐々木 尚之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.336-355, 2011-12-31
被引用文献数
3

本稿の目的は, 2000年から2010年の期間に8回実施されたJapanese General Social Surveys (JGSS) の累積データに基づいて, 時代や世代の効果を考慮しながら, 日本人の幸福感の規定構造を検討することである. JGSSは, 各年または2年に1回実施されている反復横断調査であり, このデータをプールすることで, 単年度の調査では明らかにできない時代や世代の効果を検討することができる. また, 時代や世代の効果を統制しながら, 個人レベルの変数の効果を検討することで, 特定の調査時点だけで成り立つ知見ではなく, より一般化可能な知見を得ることができる. 分析手法は, 階層的Age-Period-Cohort Analysisである. 個人は時代と世代の2つの社会的コンテクストに同時にネストされていると考え, 時代と世代を集団レベル, 年齢および幸福感を規定する他の独立変数を個人レベルに設定して分析を行う.<br>分析の結果, 次のことが明らかになった. (1) 年齢の効果はU字曲線を描く, (2) 2003年に幸福感が低下した, (3) 1935年出生コーホートや80年以降コーホートで幸福感が低い, (4) 出身階層や人生初期の社会的機会が幸福感の加齢に伴う推移パターンに影響を与えている, (5) 絶対世帯所得よりも相対世帯所得のほうが幸福感との関連が強い, (6) 就労状態や婚姻状態が幸福感に与える効果は男女によって異なる.