著者
古谷 裕一郎 寺田 卓郎 宗本 義則 飯田 善郎 三井 毅
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.573-577, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
10

精神発達遅滞患者や認知症患者における異食の報告例は散見される.今回,ビニール手袋の異食により小腸閉塞および穿孔をきたし,手術を要した1例を経験したので報告する.患者は出生時より精神発達遅滞がある17歳,男性.突然の嘔吐を主訴に近医を受診し,腸炎と診断された.しかし,症状の改善はなく腹痛も出現したため,翌日に当院受診となった.腹部単純CTにて回腸内に直径約50mmの低吸収の塊を認め,異物が疑われた.過去に布団の綿の異食歴があり,異物は布団の綿が疑われた.自然排泄を期待し経過観察の方針としたが症状の改善はなく,7日間の経過観察ののち手術を施行した.腹腔鏡にて観察すると回腸に閉塞部を認めた.同部に異物が嵌頓し,腸管は菲薄化し穿孔が疑われたため,小切開を追加し小腸部分切除術を施行した.異物は2枚のビニール手袋が一塊となったものであった.術後は腸管麻痺や創部感染を併発したが,術後28日目に退院した.
著者
宗本 義則
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.965-970, 2013-09-30 (Released:2014-01-10)
参考文献数
20

要旨:大腸穿孔は予後不良の疾患である。1991年1月から2013年4月までに当科で経験した大腸穿孔症例143例に対し患者背景,病態,予後などを検討し当院での治療戦略が妥当か,予後不良群の特定ができるか検討した。術後28日までの死亡例は22例(15.2%)であった。男性8例,女性14例,平均年齢は79歳(44歳~96歳)であり,既往並存疾患が20例(90.5%)であった。生存群と比較して,女性,高齢者(80歳以上),何らかの既往歴があり,穿孔原因が特発性,虚血性,穿孔部位が右側結腸,ショックをともなっている,および術後に人工呼吸器が必要になるような肺合併症がある症例の予後が不良であることが分かった。多変量解析では年齢,ショックの有無,穿孔部位,既往歴,虚血性の項目に有意差がみられ,なかでもショックの有無が予後に最も関与していた。予後不良群に対しては,今後抗ショック療法やPMX-DHPなどのさらなる集中治療が必要である。